コープスコード

クトゥルフ神話TRPGオリジナルシナリオっス!

このシナリオはいちこさん主催『2015シナリオグラムで作る会』のシナリオグラムコンテストに提出した作品になるっス!

残念ながらウチは入賞できなかったっスけど、他の参加者さんのシナリオも置いてあるので良かったら見てみてやってみてくださいっス~~!

 

1.   はじめに

このシナリオはクトゥルフ神話TRPGに対応している。プレイヤーは3~4人程度、プレイ時間は探索者を作成するための時間を除き、4時間程度を想定している。

シナリオの舞台設定は現代日本、季節は夏、場所はキーパーが自由に決定して良い。日本の肝試しのシーズンを合わせた舞台設定となっている。もし、舞台設定を海外に移すのであれば度胸試しとして扱うと良いだろう。

探索者はオカルト雑誌の古い洋館の記事を読み、古い洋館に肝試しへ向かうところから始まる。

2.    シナリオの背景

このシナリオはある一人の監察医(解剖医)から始まる。その監察医は多忙で家に帰ることもままならない日々が続いていた。ある時、犯罪の可能性があるとして追加で司法解剖を頼まれる。そこで目にしたのは自分にとって大切な人だった。大切な人の身体を自らの手で解剖するも、犯罪に繋がるようなものは見つからず事故として扱われた。

本当に事故だったのか、その問いの答えを知る死者は何も語らない。それから監察医は亡くなった人間から生前の記憶を読み取れないかと考えるようになった。

それからは取りつかれたように、生前の記憶を読み取れる可能性があれば何にでも取り組んだ。根拠のないオカルトじみたものも多く、死者を食べれば死者の気持ちが分かるといったものを鵜呑みにし、けがらわしい食事を繰り返していた。けがらわしい食事を繰り返しているうちに監察医の身体は人間から食屍鬼の姿へと変わっていった。

人間の姿を失った監察医は安息の場所を求めて、信頼できる仲間達に助けを求めた。その中に建築家がおり、地下深くに家を建てることにした。

この建築家は多少の魔術を心得ており、夢の時計と呼ばれるアーティファクトを作成することに長けていた。

夢の時計の見た目は立てた棺桶に時計の文字盤が付いたようなもので、棺桶の表面と時計の文字盤には象形文字のようなものが描かれている。高さは2メートルを優に超え、幅も1.2メートルある。重さは1500キロと非常に重く、人の手では動かすことができない。夢の時計は棺桶の様に開けて中に入ることができ、中に入った人間を別の場所や別の次元に運ぶことができる輸送装置となっている。他の次元として行ける場所には幻夢境(以下『ドリームランド』と呼ぶ)が含まれており、自由に行き来することができる。

建築家は地下深くに家を建てた。その家は正五角形の間取りになっており、大きく五つの部屋に分かれている。続けてドリームランドにも全く同じ構造の建物を同じ様に地下に建てた。そして各部屋ごとに夢の時計を作り、夢の時計の別の場所や別の次元に運ぶ力を借りて、現実世界とドリームランドの部屋同士を繋げて増築した。監察医に説明する際には現実世界側を表のスペース、ドリームランド側を裏のスペースと置き換えて説明を行った。

地下深くに建てた家は物資移動などに使えるよう、家のある地下と地上は広い穴で繋がっており、他人が見ても分からないように地上の入口は枯れ井戸に似せて作られている。その広い穴は地下の家の暖炉と繋がっており、冬も越せるようになっている。

監察医はその建物で生活し、亡くなった人間から生前の記憶を読み取る研究に没頭した。そんな監察医の研究や生活をサポートしようと建築家の他にコック、呪術師、医者が仲間に加わり同居した。

暫く生活しているとシャッガイからの昆虫(以下『シャン』と呼ぶ)が井戸を経由して建物内に侵入した。シャンはそこで狂気じみた活動が行われていることを知り、主体となって動いている監察医の脳に寄生した。

シャンは死者の脳にも寄生することができ、死者の脳から思考を読み取ることができた。読み取った思考を監察医に伝えることで、監察医は亡くなった人間から生前の記憶を読み取ることができたと錯覚した。シャンは監察医により狂気じみた研究をするように思考を操作していく。その結果、亡くなった人間から生前の記憶を読み取るはずの研究は、生きた人間を殺して読み取る研究に変わっていった。矛盾した研究は監察医の正気を失わせ、狂気に陥っていく。

仲間達から見て監察医は悪魔に取りつかれたかのようにも見えた。仲間達はそれぞれの得意分野でまじないや分析を行った。その一方でシャンは監察医の仲間達に対して、監察医のより狂気じみた研究に参加し協力するように思考を操作していく。研究を止めようとする気持ちと、研究に参加し協力しようとする矛盾した気持ちに板挟みにされた仲間達は次第に正気を失い、狂気に陥っていく。

ある時、監察医が狂気に陥った拍子に夢の時計についている針を破損する事態を起こす。その際に各部屋同士を繋げていた夢の時計の別の場所や別の次元に運ぶ力に不具合が起こる。夢の時計の別の場所に運ぶ力が建物全体に及び、地下にあったはずの建物は一時的に地上に露出する。

修理が終わるまでの時間に雑誌の記者に建物を見つけられてしまう。修理が終わり建物は地下へと戻る。雑誌の記者が再度訪れると建物は消えており、雑誌に採り上げられるきっかけとなる。

仲間達も遂に精神が壊れる瞬間を迎える。

建築家は健忘症を患い、監察医と仲間達のことを忘れてしまう。建築家は初めて見るかのように監察医の食屍鬼の姿を恐れて拳銃で頭を撃って射殺する。頭に撃たれた弾丸は監察医の脳に寄生していたシャンにも命中し、計らずもシャンを仕留める。

他の仲間達のことも次々と忘れ、食屍鬼の仲間に思えた建築家はハンドパレットトラック(ジャッキの要領で物を持ち上げて、タイヤが付いているためそのまま移動ができる台車)を使って夢の時計を動かし、夢の時計の重みを使って全ての部屋を塞いで行く。

最後の部屋を夢の時計で塞いだ際に、前回破損した夢の時計についている針が外れてしまう。再び夢の時計は不具合を起こし、地下にあったはずの家は地上に露出する。すぐに直そうとするも落ちた針がなかなか見つからず時間が掛かってしまう。

修理が終わるまでの時間に、今度は探索者に建物を見つけられ、家の中に入られてしまう。

建築家は修理を終え、建物は再び地下に戻り、探索者達を閉じ込める。

今度は自分の存在すら忘れて行く。その恐怖から逃れるため、痛みで自分の存在を自覚しようと何度もレンガに頭を叩きつけて絶命する。

他の仲間達も狂気に耐えきれず自ら命を絶っていった。

 

夢の時計についての補足

夢の時計(大きな柱時計)とはサプリメント『キーパーコンパニオン』などに記載されている『時の時計』の別称。
ここでは本シナリオ内での夢の時計の取り扱いについて説明する。

夢の時計は1500キロと非常に重く人の手では動かすことができない。
工房Bに置いてあるハンドパレットトラックを使えば移動することができる。

夢の時計の位置を動かした場合、同じ位置にある夢の時計も移動する。
(A側にある夢の時計を動かすとB側にある夢の時計も一緒に動く。)

夢の時計を他の部屋に運ぼうとする場合、扉につかえてしまうため、移動できない。

夢の時計の中は成人男性が立ったまま優に入ることができる程に広い。
中に入って扉を閉めると同じ位置にある夢の時計の中に移動する。
(A側にある夢の時計の中に入って扉を閉めるとB側にある夢の時計の中に移動する。)

紐など扉からはみ出た状態で閉じた場合、夢の時計の中では、頭上から紐が伸びてきているような状態になる。

両面開きの筆箱と同じ様に、夢の時計には手前と奥に扉が付いており、中で繋がっている。

夢の時計を破壊した場合、同じ位置にある夢の時計も破壊され、夢の時計の中に入って扉を閉じても移動しなくなる。
また、破壊した夢の時計が置いてある外側の扉が閉まって開かなくなる。

3.    シナリオの概要

夏の夜のこと。シャンは新たなコロニーの建築候補地を求めて探し回っていると、肝試しで夜道を怯えながら歩き回る探索者達を見つけた。

シャンは人間が恐怖に陥り、正常な判断ができなくなる様子を観察することが好きで、その欲求を満たす為に人間の思考を変化させる。しかし、目の前にいる探索者達はシャンが思考を変化させずとも自ら恐怖している。シャンはそんな探索者の思考に興味が湧き、探索者達の脳に寄生する。

寄生し思考を読み取ってみると、肝試しの場所というのが人の寄り付かないような陰鬱な場所ばかりで、コロニーの建築候補地としても申し分ないことが分かった。そこで探索者達にコロニーの建築候補地を代わりに探させることにし、肝試しへの熱意が上がるように思考を変化させた。

物語は探索者が街外れの森の中にある古い洋館の記事を読み、探索者全員で肝試しに行くところから始まる。

夜中。噂通りに森の中に入ると古い洋館を見つける。鍵は掛かっておらず、探索者達が中に入ると扉が勝手に閉まり、閉じ込められてしまう。

探索者達が入ってきた扉の他に扉は二つあり、一つは部屋の向こう側に夢の時計が置かれているため開けられない。もう一つの扉の前にはこちら側に夢の時計が置いてあり、扉を開けるには夢の時計を動かす必要がある。

夢の時計は棺のように開けることができ、中に入って隠れることができる。人が隠れるには打ってつけで悪戯心が湧き中に入ると、全く同じ構造の別の部屋に移動する。それを見ていた他の探索者からすると人が消えたように見えるだろう。

全く同じ構造の別の部屋に移動すると夢の時計を動かす為のハンドパレットトラックを見つける。これを使って夢の時計を動かし、扉を開けて進むことができる。

古い洋館を進んでいくと探索者達は死体を見つけることになるだろう。死体に触れると死体の生前の記憶が流れ込んでくる。それは映像だけではなく触覚や匂い、気持ちすらも共有し、記憶というより共感や疑似体験に近い。これは探索者の脳に寄生したシャンが死体に残った記憶を読み取り、探索者に見せているためだ。

この時に得られる情報はこの古い屋敷に住んでいた生前の監察医から悪魔(シャン)を取り除くためのまじないや研究に繋がるものだ。

探索を進めていくうちに、死体の生前の記憶が流れ込んでくる異常な力は悪魔(シャン)によるものだと探索者達は気が付くだろう。そして同時に、悪魔(シャン)を取り除くための呪文とまじないを知ることになるだろう。

家の中を進んで行くと水が漏れ出ている天井を見つける。地上には大きな池があり、天井から漏れている水はその池の水が浸水してきているためだ。天井に大きな力を与えると家の中は池の水で満たされていく。この水は地上の井戸まで浸水することになる。家の中の暖炉から、水に浮かびながら井戸に繋がる穴を通って地上へ脱出することができる。

脱出する地上も現実世界とドリームランドの二択があるため、探索者達は使用する暖炉を慎重に選ぶ必要がある。

探索者達はシャンに寄生されていることに気付き、シャンを追い出すことができるのだろうか。古い洋館から脱出し、現実世界に帰還することができるのだろうか。

 

4.    探索者の作成

探索者は落石事故により廃止になったトンネル、木々に浸食された廃道、廃墟となった病院など、人が寄り付かなそうな如何にもという心霊スポットに、肝試しへ何度か行っている。そして今回も新たな場所を調べ、肝試しへ向かうことになる。

その理由は何でも良い。怖い思いをすることが好き。幽霊を見たいから。心霊的なものを否定するため。皆が心配だから。など。

【次の内容はプレイヤーに秘匿する】探索者は全員シャンに寄生されている。シャンは新たなコロニーの建築候補地を探しており、人の寄り付かない場所(心霊スポットなど)を積極的に調べて下見するように意識を操作している。

5.    導入

熱い夏の日の事。

探索者がオカルト雑誌等を読んでいると『時計の館』という記事が目に留まった。

そこには『真夜中の森の奥地に進んで行くと柱時計のボーン…ボーン…という音が聞こえてきた。音のする方へ向かうと古い洋館に辿り着いた。外見から察するに百年は経っているだろうか。地図を調べても建物があるなど載っていない。後日改めて向かうとそこに古い洋館はなく、大きな池と古びた枯れ井戸があるだけ。一体あの館はどこへ消えてしまったのだろうか。』と紹介されている。

早速他の探索者を巻き込んで、肝試しと銘打って紹介されている場所へ向かう約束を取り付ける。

真夜中の肝試しには調度良い頃合いに全員で森の中へ入っていくと柱時計の「ボーン…ボーン…」という音が聞こえてくる。音のする方へ向かうと古い洋館に辿り着く。

【キーパー向け】洋館の全体マップ

 

6.    古い洋館前

古い洋館の側には屋根のない、通常よりかなり広めの大きな枯れ井戸がある。

古い洋館の正面には両開きの扉があるが、窓は一つもなく、天井は2階建のように高い位置にある。

外壁はレンガ造りで苔に浸食されており、それは壁のように平らで横に続き、途中で奥へ曲がっているのが見える。

 

・正面の扉に鍵は掛かっておらず開けて入ることができる。【探索者達が入るタイミングはなるべく同時にする】正面の扉に入ると工房Aの外側の扉に繋がる。

・洋館の周辺を探ろうとしても周りは茫々の草と自由気ままに伸びた枝葉に遮られ、外周を知ることはできない。

・枯れ井戸の底は見えず、幅も成人男性が4人は優に入れるほどの広さがあり、もし落ちれば二度と登っては来れないと分かるだろう。

枯れ井戸に小石を投げると1分~30秒程度でカツンという乾いた音が聞こえる。【<物理学>の知識があれば小石の重さと経過時間から井戸の深さが40メートルあることが分かる。】

 

7.    工房A

古い洋館の中に入ると天井は2階建ての高さの位置にあり、広く感じる。

部屋は三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。探索者達が入ってきた外側の扉、左右に一つずつ扉がある。左右の扉は探索者達が入ってきた扉から見て奥の方にあり、二つの扉同士は比較的近い位置にある。

部屋全体には沢山の振り子時計が所狭しと置かれており、部屋の隅には道具などが置かれた作業机があることから、工房のような印象を持つ。

特に目を見張るものと言えば、部屋の左奥の扉の前に置かれた、佇む高さ2メートルを優に超え、幅も1.2メートルある大きな柱時計だろう。それは扉を塞ぐようにピッタリと扉の前に置かれている。

【探索者全員が部屋に入るようにする】探索者全員がこの部屋に入ると扉はバタンと大きな音を立てて閉じる。もし開けようとしてもドアノブは回るがビクともしない。人によっては古い建物のため、立てつけが悪いと考えるかもしれない。

 

・左奥の扉の前にある大きな柱時計は非常に重く、人の手では動かすことができない。

・右奥の扉を開けようとするとドアノブは回るが扉はビクともせず、奥に何かが支えているような感覚がする。

・外側の扉を開けようとするとドアノブは回るが扉はビクともせず、奥に何かが支えているような感覚がする。

・作業机の上には造りかけの時計と部品に加えて、ルーペやピンセット、定規や分度器等といった道具が置かれている。【角度を測れるものを使えば部屋の外側の両辺の角度が54度と分かる。】

・高さ2メートルを優に超え、幅も1.2メートルある大きな柱時計の外見は立てた棺桶に時計の文字盤が付いたようなものに見える。時計の文字盤や棺桶部分の表面には象形文字のようなものが描かれている。【<クトゥルフ神話>の知識があれば象形文字から『他の場所・次元に運ぶことができる輸送装置』であることが読み取れる。】

時計部分には4本の針があり、短針と長針に加え、太い針と先が二股に別れた針がある。全ての針は動いており何を基準に動いているのかは分からない。

大きな柱時計は棺の様に開くことができる。中は空洞になっており、人が隠れるには十分な広さがある。これを見つけた探索者はこの中に隠れて、人を驚かせたら驚きに満ちた顔が見れると考えが巡るだろう。【大きな柱時計の中に入って扉を閉じると工房Bの大きな柱時計から出てくることになる。もし、夢の時計の中に入ろうとしなければ、シャンが精神的欲求を満たそうとしているとして露骨に誘導すると良いだろう。】

他の探索者が大きな柱時計の中に隠れたことを認識した状態で扉を開けた場合、消えていることに驚き正気度ロール(0/1D2)を行う。

目撃しておらず、いつの間にか人が居なくなっている事実に気付いた場合は正気度ロール(0/1)を行う。

 

8.    工房B

工房Aの大きな柱時計の下部分を閉じて開くと工房Bの大きな柱時計の下部分から出てくることになる。初めて来た探索者は突然知らない場所に出た不可解な出来事に正気度ロール(0/1D2)を行う。同時に足元に手紙が落ちる。

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋全体には木材やレンガが上に積まれたパレットがいくつも置かれている。

外側(入口側)の扉の前にもレンガが積まれたパレットが置かれてあり、ハンドパレットトラック(ジャッキの要領で物を持ち上げて、タイヤが付いているためそのまま移動ができる台車)が差し込まれている。そしてそのレンガが積まれたパレットに人がもたれ込むように座っているのが見え、積まれたレンガの角には大量の血液が広がっている。

 

・左奥の扉の前にある大きな柱時計は非常に重く、人の手では動かすことができない。ハンドパレットトラックを使えば大きな柱時計も持ち上げて移動することができる。

大きな柱時計を動かすと、両面開きの筆箱と同じ様に、手前と奥の二か所に扉が付いていることが分かる。また、大きな柱時計を動かすと工房Aの大きな柱時計も動く。もし何も知らずに工房Aの大きな柱時計が独りでに動く様子を目撃した場合は正気度ロール(0/1)を行う。

・右奥の扉を開けようとするとドアノブは回るが扉はビクともせず、奥に何かが支えているような感覚がする。

・外側の扉はレンガが積まれたパレットをハンドパレットトラックを使って動かすと開けることができる。その場合工房Aの外側の扉に繋がる。反対に工房Aの外側の扉も開けることができるようになり、工房Bの外側に繋がる。
閉じ込められたことに気付いた探索者は正気度ロール(0/1D2)を行う。

・手紙を読むと次の内容が書かれている。

夢の時計のメンテナンスについて

当方が建築した本建物は夢の時計の力を借りて、表のスペースに加えて裏のスペースを活用できるようになっております。

外側の扉もしくは夢の時計の中を通ることで表のスペースと裏のスペースを行き来することができます。

くれぐれも夢の時計を壊さぬよう丁重に扱いください。

また、手紙の裏面には

『時計の位置は扉と扉の間に置くこと。』

と書かれている。

・外側の扉の前のパレットに積まれたレンガの血液を調べるとまだ乾いておらず、新しい血だという事が分かる。

・もたれ込む人物を確認すると頭部から多量の血が流れた跡がある。【<医学>や<応急手当>の知識があれば頭を何度も打ったような打撲痕があることが分かる。】

息は無く既に事切れていることに気付くだろう。死体であることに気付いた探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

死体に触れると探索者の脳裏に、次の星のマークが描かれた紙の映像が浮かぶ。

それと同時に声が聞こえる。

「これを一筆書きで描けないと本来の意味を成さない。それがこの建物だからこそ実現できる。」

【<オカルト>の知識があれば五芒星と呼ばれるマークであり、魔除けとして使われていることが分かる。距離と角度が等しく、交点が上下順になっていることで効果を成す。一部のカルティストが上下を反転したマークには真逆の効果があると解釈しているが、向きに意味はなく、いい加減な噂であることが分かる。】

9.    食堂A

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

食事用のテーブルが置いてあり、コックの格好をした人が椅子に座ってテーブルに突っ伏している。また、テーブルの上にはメニュー表が置かれている。

 

・メニュー表を見ると次の内容が書かれている。

・キュイス

・サン

・ドワ

・クール

・セルヴォー

【<フランス語>の知識があればメニューに書かれている言葉が分かる。内容は次の通り。】

・Cuisse(腿)

・sein(胸)

・Doigt(指)

・Coeur(心臓)

・Cerveau(脳)

・テーブルに突っ伏しているコックの格好をした人を調べると胸部に包丁が突き刺さっている。息は無く既に事切れていることに気付くだろう。死体であることに気付いた探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

死体に触れると、香草を使った肉をテーブルに置いて「昔から守護や浄化と言った魔除けの儀式として薪の代わりにローズマリーが焚かれています。これはそんなローズマリーをふんだんに使った料理です。これを食べて邪気を払いましょう。」と言いながら切り分けている映像が浮かび、それと同時にその料理の匂いも感じ取れる。

 

10.         食堂B

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

冷蔵庫、引き出しのある流し台とコンロがあり、その周辺には調理器具等が並んでいる。

 

・冷蔵庫を開けると布で包まれた物がいくつも入っている。包みを外すとメニューに書かれている人体の一部ということが分かる。人体の一部を見つけた探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

・引き出しを開けると乾燥した様々な香草や調味料、皿やタコ糸と言った道具が入っている。

乾燥したローズマリーを探せば束になっているものが見つかる。

11.         礼拝室A

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋の壁には動物の頭部の骨がいくつも飾ってあり、机の上にオカルト的な本が置いてある。

 

・机の上のオカルト的な本には栞が挟まっており、そのページには次の内容が書かれている。

悪魔に取り憑かれた女性アンネリーゼ・ミシェル

彼女は幼い頃から身体の痙攣があり、精神科医からてんかんと診断された。医者に薬を処方され症状が治まっていた。

しかし今度は幻覚や幻聴が聞こえるようになったと主張し、それだけに留まらず彼女は習ってもいないラテン語を話し出した。その様子を見て祭司は悪魔に取り憑かれていると確信した。

【<オカルト>の知識があれば類似した事例として次の事を知っている。】

悪魔と契約を取り交わした少女クララ・ゲルママ・セレ

16歳の時に悪魔と契約を結んでしまい、知らないはずの言語をいくつもしゃべったり、まわりの人たちの過去や考えを読める能力が現れた。

・星マークについて次の内容が記載されている。『五芒星と呼ばれるマークであり、魔除けとして使われていることが分かる。距離と角度が等しく、交点が上下順になっていることで効果を成す。一部のカルティストが上下を反転したマークには真逆の効果があると解釈しているが、向きに意味はなく、いい加減な噂であることが分かる。』

 

12.         礼拝室B

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

祭壇が置いてあり、その前に人がうなだれるように座っている。その人物は毛皮のローブを纏い、動物の骨で作られたアクセサリーで着飾っていて、呪術師のように見える。

 

・祭壇には動物の皮や骨を組み合わせて作られた人形が置かれている。【探索者のマジック・ポイントが《まじないの力を引き出す》呪文1回分も無ければ、不足分のマジック・ポイントが込められたアーティファクトとして扱う。】

・呪術師を調べると心臓部に大きな杭が突き刺さっており、手元にハンマーが転がっている。息は無く既に事切れていることに気付く。死体であることに気付いた探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

死体に触れると、礼拝堂の前で繰り返し言葉を読み上げる人の声が聞こえてくる。言葉は次の通り。

ウィンキト・クィー・セー・ウィンキト

【<ラテン語>の知識があるか、古代ローマに関心のある探索者は言葉の意味が分かる。内容は次の通り。】

Vincit qui se vincit.

(自らを征服するものを征服する)

※古代ローマの格言

言葉に加えて、次の知識も頭に入ってくる。

《まじないの力を引き出す》

まじないの効果は異なるまじないを組み合わせることで強力になっていく。

マジック・ポイント10とPOW1を消費し、効果を与える対象者の数だけPOW1を追加で消費する。呪文を発動するには1時間途切れる事なく唱え続けなければならない。

協力する場合、マジック・ポイント10と効果を与えるためのPOWは分散することができる。ただし呪文の詠唱に参加するにはPOW1を自ら消費しなくてはならない。

誰か一人でも唱え続けることができていれば儀式は継続する。もしも誰も唱えていない状態(全員気絶など)になった場合は始め(マジック・ポイント10とPOWを消費するところ)からやり直さなければならない。

 

13.         医務室A

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋は白をベースとした色調でシャウカステン(レントゲン写真を挟んで裏から照明を当てるディスプレイ器具)のある作業机、薬品や救急キットの入ったガラス棚がある。

また、作業机には白衣を着た人が座ってうつ伏せになっており、カルテが置いてある。

 

・ガラス棚には赤、青、黄といった様々な色のついた溶液の入った蓋付きの瓶が置かれている。

適当に瓶を取って蓋を開けるとアルコール臭がし、それに加えてハーブのような強い匂いが混ざっている。【<薬学>の知識があればハーブとエタノールを混ぜ合わせて作るチンキ剤と呼ばれる液状の製材であることがわかる。これはハーブに含まれる成分・効果を余すことなく使用することができる。ハーブは1週間程漬け込んだら破棄する。】

・カルテには次の内容が書かれている。

頭部内部に不審な影を確認。デカいハエにも見える。脳内部に入り込んでいると思われ、外科手術で取り出すのは困難を極めるだろう。

何度かレントゲンを撮ったが、このハエは脳の中で生きているようで、まるで寄生虫だ。

ハーブには虫の嫌がる匂いを発する忌避効果があるという。薬を作るためのハーブで幾つか試す。

試した結果、アルニカにのみ僅かな反応が観られた。万能薬と云われるだけのことはある。

・作業机にあるシャウカステンは電気を着けることができる。レントゲン写真をシャウカステンを使って見てみると人の頭部が写し出される。

【医務室Bで探索者を写した場合】脳に位置する部分には脳の半分ほどの大きさのハエらしき虫の影が見える。自分の脳に寄生する昆虫の存在を知った探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

【医務室Bで執務室Bの死体を写した場合】脳に位置する部分には脳の半分ほどの大きさのハエらしき虫の影が見え、虫の影の体には穴が空いている。人の脳に寄生する昆虫の存在を知った探索者は正気度ロール(0/1D2)を行う。

【医務室Bでその他の死体を写した場合】ハエらしき虫の影は写らず、頭蓋骨が見えるだけ。

・突っ伏している医者の格好をした人を調べると空の小瓶を握っており、息は無く既に事切れていることに気付く。【<聞き耳>など感覚が鋭ければ死体の口からあんずやオレンジ、収穫前のアーモンドのような甘酸っぱい臭いを感じ取れる。更に<医学>や<薬学>の知識があれば青酸中毒によって亡くなったことが分かる。】

死体に触れると、ガラス棚から瓶を持ちだして青い液体から青い花を取り除き、同様に黄色い液体から黄色い花を取り除いている映像が頭に浮かぶと同時にアルコール臭とハーブの匂いを感じる。【黄色い花がアルニカであり、黄色い液体がアルニカのチンキ剤。】

 

14.         医務室B

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋の両角にはレントゲン室と現像室と書かれた小部屋がある。

 

・レントゲン室のなかにはベッドのように横になれる検査台がある。頭部に当たるところにはレントゲンを撮るための機器が配置してあり、カセッテ(レントゲンフィルムがセットされた板)が嵌められている。

壁にレントゲン写真を取って現像するまでの手順が書かれており、ベッド脇までコードが伸びているボタンを押すだけで撮ることができる。撮影された映像はカセッテ内のフィルムに焼かれ、感光を防ぐため、現像室内でフィルムを取り出す必要がある。また、レントゲンフィルムはカセッテに入っている一枚だけで、一度しか撮影できないことが分かる。

・現像室は赤い照明がついている。部屋には3つの液体が張ってあるバットがあり、バットには現像液、定着液、水と書かれている。レントゲン写真を現像するまでの手順によるとカセッテからフィルムを取り出した後、現像液に浸し、次に定着液に浸し、最後に水で洗って乾燥させる。

15.         執務室A

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋には使われていない大きな暖炉がある。暖炉の入口は人が優に入っていける程の高さで、中も成人男性が4人は優に入れるほどの広さがある。

他には本棚がいくつも並んでおり、図鑑や辞書など様々な種類の本が所狭しと並べられている。

一部の本棚と蔵書されていた本は全て水で濡れている。

 

・濡れている本棚を見ると天井に小さなヒビが入っており、そこから水が滴っていることに気付く。【大きな池の水が地下水となって染み出している。大きな衝撃(例えば拳銃で撃つなど)を与えれば決壊して水が流れ出し、建物全体を水で満たしていく。】

・植物図鑑を調べるとキク科で黄色い花を咲かせるアルニカの花と根には消炎・解熱・鎮痛作用があり中世ヨーロッパでは万能薬として知られ、民間薬として広く使われていたことが分かる。

・寄生虫図鑑を調べると次の内容が分かる。また、シャンについては記載がないことが分かる。

昆虫を媒体とするハリガネムシという寄生虫は時期になると宿主の脳にタンパク質を注入し、宿主を操作して水に飛び込ませる。

猫を媒体とするトキソプラズマという寄生虫は恐怖感や不安感を鈍らせる神経伝達物質を作り、鼠等の中間宿主を介して猫の縄張りに自ら入り込み食べられるよう仕向ける。このトキソプラズマはヒトにも寄生し、男性であれば反社会的な性格に、女性であれば社交的な性格に変えてしまう。

宿主の行動を制御し、時に性格すらも変えてしまう。

 

 

16.         執務室B

部屋は最初の部屋(工房A)と全く同じ構造で、三角形のような形になっており、それぞれの壁には一つずつ扉がある。その内の二つの扉同士は比較的近い位置にあり、もう一つの扉は壁の中央にある。大きな柱時計も最初の部屋(工房A)と同じ位置に置かれている。

部屋には使われていない大きな暖炉がある。暖炉の入口は人が立ったまま入っていける程の高さで、中も成人男性が4人は優に入れるほどの広さがある。暖炉から明かりが射しこんできていて、部屋全体を明るく照らしてしている。

他には手記が置いてある執務机がある。そこには車椅子にもたれ掛かるように人が腰を掛けている。しかし服から覗かせる手はゴムのように弾力性があり、鋭く伸びた爪がある。また、力なく項垂れているその表情は犬に似た顔だ。人ならざるもの【食屍鬼のこと】を目撃した探索者は正気度ロール(0/1D6)を行う。車椅子のそばの床には拳銃(32口径リボルバー)が落ちている。

 

・犬に似た顔の人を調べると、息は無く既に事切れていることに気付く。後頭部と前頭部から血液が流れ出ていることがわかる。【<医学>や<応急手当>の知識があれば後頭部に火傷の痕があることが分かる。後頭部に拳銃を押し付けて発砲されたことが推測できるだろう。】

・執務机の上には手記と思われる本がある。

執務机の手記を読むと次のようなことが書かれている。

死者は何も語らない。死とは暗号化のようだ。

この暗号を読み解き、生前の記憶を抜き取ることができれば、生きている者にとって有益なことだ。

例えば殺害された者が誰に殺されたのか知ることができるし、生前に聞きそびれたことを引き出すこともできる。

突然、死者の記憶を読み取れるようになった。この力は日の光が当たらないところでしか使うことができない。それと同時期から時々、自分が分からなくなる。まるで全く別の何者かに変わっていくようだ。

・犬に似た顔の死体に触れても何も起きない。【暖炉から入る日の光によって、探索者の中にいるシャンが体外への活動が抑え込まれているため何も起きない。】

【明かりのない別の部屋であれば次のことが分かる。】犬に似た顔の死体に触れると、暗い部屋の中で執務机に向かっている映像が見える。すると暖炉にドサっと人が首から落ちてくる。首はあらぬ方向に曲がっており、見ただけで即死であることが分かる。その死体に近づき手を触れると更に別の映像が見える。

大きな池が見え、そのすぐ近くには成人男性が4人は優に入れるほど広さのある枯れ井戸がある。井戸の石積みは暖炉に使われている石積みと良く似ている。すると音もなく背中から突然捕まれる。足は地から離れていき高度が上がっていく。何とか身を捩らせて背後を確認すると、油っぽく滑らかなクジラのような皮膚、内側に曲がるように伸びた角、コウモリのような翼をもち、トゲの付いた尾を持っている化け物【夜鬼のこと】に捕まれていることが分かる。高く持ち上げられると井戸の中へと放りこまれ、首が折れる感覚を覚える。

化け物の存在を知り、悲惨な死を疑似体験した探索者は正気度ロール(1/1D6)を行う。

 

17.         暖炉A

使われていない大きな暖炉がある。暖炉の入口は人が立ったまま入っていける程の高さで、中も成人男性が4人は優に入れるほどの広さがある。

暖炉の中に入って仰ぎ見ると40メートルほど煙突が続いた先に夜空が見える。

 

18.         暖炉B

使われていない大きな暖炉がある。暖炉の入口は人が立ったまま入っていける程の高さで、中も成人男性が4人は優に入れるほどの広さがある。

暖炉の中に入って仰ぎ見ると40メートルほど煙突が続いた先に昼間のように明るい空が見える。

19.         まじないの準備

基本ルールブックP.259にある《シャンを追い出す》呪文に良く似た呪文として扱い、本シナリオ用にアレンジしたものとなる。

シャンを追い出すためのポイントは5つあり、いくつ押さえているかで1時間の詠唱が終わった際に成功判定を行う。

①五芒星を描く。
②(薪の代わりに)ローズマリーを焚く。
③アルニカを使う。
④呪文「ウィンキト・クィー・セー・ウィンキト」を1時間唱え続ける。
⑤日の光が当たっている。

【まじないを施す例】

アルニカを抽出した黄色い液体を使って床に五芒星を描く。五芒星を描く際に交点の上下の表現は表のスペースと裏のスペースで表現する。表と裏のスペースの切り替えには大きな柱時計と外側の扉を使う。

暖炉でローズマリーを焚き、日の光が当たっているB側の執務室で「ウィンキト・クィー・セー・ウィンキト」を唱え続ける。

 

20.         まじないの行使

《まじないの力を引き出す》呪文を行使すると探索者の中に巣食うシャンが抵抗を始める。

【呪文の唱え始めに発生。呪文の詠唱に参加している探索者が対象。】
呪文の文言に対して強い嫌悪感を覚えるようになる。探索者は強い不快感に襲われ正気度ロール(0/1)を行う。

【呪文を唱えて10分後に発生。工房の死体に触れていた探索者が対象。】
自分に親しそうに話す人の顔を見るも名前が思い出せない。それどころか、親しそうに話しているが初対面のような気がする。思い出そうとすればするほど忘れて行く。そんな感覚と精神的な苦痛を共感した探索者は正気度ロール(0/1)を行う。

発狂した探索者はパニックに陥る。

【呪文を唱えて20分後に発生。医務室の死体に触れていた探索者が対象。】
「生きている価値なんて無い。」「恥を知れ。」といった罵倒するような声が絶えず聞こえる。それに加え常に何かに見張られているような気さえしてくる。常に監視されているような感覚に取り付かれ、正気度ロール(0/1)を行う。

発狂した探索者は肉体的なヒステリーあるいは感情の噴出に苛まれる。

【呪文を唱えて30分後に発生。食堂の死体に触れていた探索者が対象。】
手足を縛り、体を縄で固定された人間の映像が見える。人間の口にはタオル地の布が咥えられている。手にずしりとした重さがあり、腕を上げて人間の足に置くように当てる。それは鋭く研がれた肉切り包丁で、引いて行くと皮膚が割け赤い肉が見える。それと同時に耳障りな叫びが絶えず聞こえ、温かい血でぬるぬると滑る手の感触があり、滑らないように慎重に刃を当てて体をバラして行く。そんなおぞましい光景と手の感覚を覚える。まるでその場で実体験をしたような体感に正気度ロール(1D3/1D6)を行う。

発狂した探索者は殺人癖を患う。

【呪文を唱えて40分後に発生。呪術部屋の死体に触れていた探索者が対象。】
頭の中がフワフワと朦朧として多幸感を覚える。そして身体中に不快感が現れ、腕がもぞもぞと膨らみ動いているのが見える。手で払うと皮膚に穴が開いて中から蛆が涌いてくる。自分自身が体験したかのように体にその感覚が残る。正気度ロール(1/1D6)を行う。

発狂した探索者は神への不徳に苛まれるような幻覚に襲われる。

【呪文を唱えて50分後に発生。執務室の死体に触れていた探索者が対象。】
人の肉を食べる光景が浮かぶ。目の前には頭部のない丸焼きにされた一人の人間。その人間の腿をナイフで切り分け、フォークに刺して口に運び、赤黒い鉄の味がする液体で流し込んで行く。煮込まれた指をしゃぶり、ふやけて柔らかくなった爪の食感を楽しむ。デザートは冷やされた脳ミソでソフトクリームのようにスプーンで掬い口へと運んで行く。

人の血と肉の味を覚えてしまった探索者は正気度ロール(1D3/1D6)を行う。

発狂した探索者は異常偏食を患い、鮮度の高い人の血と肉を求めるようになるだろう。

【呪文を唱えて60分後に発生。】
1時間呪文を唱えることに成功した探索者はシャンを追い出せるかの成功判定を行う。次の条件を満たすたびに成功率が20%上がり、全て満たした場合100%として自動成功になる。【キーパーの裁量で惜しいと感じれば細かい調整をすると良い。】

①正しく五芒星が描けている。

【描写例】五芒星の形に光の柱が立つ。

②(薪の代わりに)ローズマリーが焚かれている。

【描写例】ローズマリーを焚いていた火が高く燃え上がり、煙が呪文の対象者の身体を包み込む。

③アルニカが使われている。

【描写例】アルニカが塗られた箇所が黄色く輝き出す。

④呪文「ウィンキト・クィー・セー・ウィンキト」を1時間唱えた。

【描写例】呪文を唱えていた探索者の身体が仄かに青い光に包まれる。

⑤最後まで日の光が当たっている場所で詠唱した。

【描写例】頭の中が熱く感じる。

 

【失敗した場合】

探索者の頭に痛みが襲う。まるで何かに脳を鷲掴みされたかのような痛みだ。探索者は耐久力を1D3減らす。【体内からのダメージのため、装甲は無視する。】

 

【成功した場合】

探索者の頭部からハト程の大きさのハエに似た甲虫が浮き出てくる。それは光沢のある触肢に覆われている10本足に、半円形の固い翼は三角形の鱗で覆われており、顔のところから曲がりくねって先端でくっつき合っている巻きヒゲ、3つの口を持つ。まぶたのない複眼は常にこちらを見据えているかのようだ。このおぞましい昆虫を目撃した探索者は正気度ロール(0/1D6)を行う。

大きな甲虫は熱した鉄のように白熱し床に落ちると腹部を見せたまま足をバタつかせ、翅を動かし床を動き回る。しかし動きは段々と鈍くなり、動きが止まる。まぶたのない複眼が恨めしそうにこちらを見据えているかのようだ。【シャンは死に、探索者を襲うことはない。探索者は死体に触れても何も起こらなくなる。】

 

21.         脱出

暖炉の煙突から外へ出ることができ、地上の井戸に繋がっている。

【脱出方法の例】

執務室Aの濡れた本棚の上にある天井のヒビに向かって拳銃で発泡する。すると水が勢い良く流れ出し大きな水音を立てて建物に水が貯まっていく。水位はあっという間に膝上まで上がり、建物全体が水で満たされるまで時間は掛からないと想像が着くだろう。

【煙突に向かった場合】水位はみるみる上がり、煙突の中を上っていく。遂に水位の上昇は止まり、煙突の縁が手の届く距離にある。

【煙突に辿り着けなければ】天井まで満たされた部屋の中で最後の空気を吸い、次に吸い込むのは冷やかな水だけだ。冷たく重たい水が肺を満たし、苦しさから逃れるように意識を手放す。【幸運によっては暖炉の煙突まで押し流され、人工呼吸による救出が可能かもしれない。】

22.         エンディング

煙突の縁に手を掛けよじ登る。今まで暖炉だと思って登ってきたものは洋館の前で見た枯れ井戸だと分かる。しかしあるはずの古い洋館の姿はなく、代わりに大きな池が広がっていた。

シャンを追い出し、暖炉Aから脱出

探索者は暗い空の下、元来た道を辿って家路に向かって歩いていく。日が昇り、朝焼けの空は鳥のさえずりと共に日常への帰還を歓迎しているかのようだ。そろそろ大きな道に出ても良い頃合いになると、車の音と人の声が聞こえ、元の喧騒へと帰ってきた実感を得る。

日常に戻った探索者は肝試しに熱心だったにも関わらず、夏の終わりと共に興味が去っていくことだろう。

シャンを追い出さず、暖炉Aから脱出

探索者は暗い空の下、元来た道を辿って家路に向かって歩いていく。日が昇り、朝焼けの空は鳥のさえずりと共に日常への帰還を歓迎しているかのようだ。そろそろ大きな道に出ても良い頃合いになると、車の音と人の声が聞こえ、元の喧騒へと帰ってきた実感を得る。

次の夜、探索者は人が立ち入らないような深い谷の森の中に来ていた。目の前には六角推の不思議な建造物があり、中に入ると長い階段が続いている。不思議と恐怖はなく、寧ろ行かなくてはならないような気さえする。階段を降りて行くとそこには自分の身体よりもずっと大きな巨大な二枚貝【アザトースの化身であるザーダ=ホーグラのこと(SIZ120)】が置いてある祭壇に辿り着く。

二枚貝から付属肢が伸びてくると探索者は向かわなければならないような気がし、食指に身体を寄せると一瞬にして身体は二枚貝の中へ運ばれ、強烈な熱を感じる。まるで電子レンジの中に入ったかのように身体の内側から沸騰し溶けていく。その様を見て何故か悦びを感じながら意識と共に身体は溶けていくのだった。【シャンに思考を操作され、探索者はシャンのコロニーにあるアザトースの化身へ喜んで生け贄として自分の身を捧げる。】

暖炉Bから脱出

探索者は明るい空の下、元来た道を辿って家路に向かって歩いていく。日は傾き、夕焼け空はとても綺麗な赤色でまるで血のようだ。そろそろ大きな道に出ても良い頃合いだというのに未だに山を降りられていない。

日が傾くと沈むのはあっという間で、すぐに辺りは鬱蒼とした闇に包まれる。すると音もなく背中から突然捕まれる。足は地から離れていき高度が上がっていく。

探索者は気付くだろう。油っぽく滑らかなクジラのような皮膚、内側に曲がるように伸びた角、コウモリのような翼をもち、トゲの付いた尾を持っている化け物【夜鬼のこと】に捕まれ、高く持ち上げられていることに。

更に気付くだろう。空から見た地上には見たことのない怪物が動き回り、自分が知っている世界とは異なっていることに。

【シャンを追い出せていない場合、この段落を追加で描写する。】
探索者の頭から大きなハエのような甲虫が抜き出て、探索者を捕まえている化け物の頭の中へ入っていくのが見える。するとその化け物は探索者に向かって「やっと良い場所を見つけた。」と言う。【シャンにとってドリームランドへの進出は大きな足掛かりとなる。】

そして化け物は上空100メートル(ビル30階位の高さ)まで探索者を持ち上げると掴んでいた手を離して地上へ向けて放る。地上に叩きつけられるまでの最後の5秒間を何も抵抗できないまま浪費することだろう。

暑い夏の大地に鮮血の赤い花を咲かせる死体。最後に何を思ったのか、死という暗号化が掛かったその身体からは誰も知ることはできない。

 

23.         結末

探索者の身体に寄生していた悪魔(シャン)を追い出すことに成功した探索者は1D6の正気度を獲得する。

その後、古い洋館が再び現れることはなく、井戸の底からは大きな柱時計に使われていた時計の針がいくつか見つかるのみだった。同じ怪事件が起こることはないと確信した探索者は1D10の正気度を獲得する。

全員無事に日常を迎えることができたのなら喜びを分かち合うことができ、1D10の正気度を獲得する。

24.         シナリオ名

様々なところでコードが使われている。例えば身近なところではバーコードやQRコード、専門で取り扱ってるようなところでは識別コードといった具合だ。

コードというものは決められた規則に従って書かれているが、その規則が分からなければ何が書かれてあるのか、何を指し示す情報なのか知ることができない。

つまり、目の前に情報があるのに分からないという事象が起こる。

亡くなった人は何も語ってくれない。もし、亡くなった人の意思を読み取ることができれば全て分かるのにという歯がゆさがコードに対するイメージと重なり、コープスコードというタイトルにした。

 

25.         シナリオグラム

シナリオパターン(2):『タワーディフェンス』(迫りくる怪奇から【場所】を死守せねばならない。そこには怪奇を解決する鍵がある。)

【場所】(63):『【門の彼方】の世界』

【門の彼方】(15):『ドリームランドのどこか』

発端の怪異(31):『オカルト的な事件が世間を騒がせている。』(人体発火現象/人体消失現象etc)

事件の真相(55):『独立種族の陰謀』(シャッガイからの昆虫が新たなコロニーを建築しようとしている。)

 

 

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One Reply to “コープスコード”

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