初めて作ったクトゥルフ神話TRPG
オリジナルシナリオっス!
推奨人数:2人
プレイ時間:ボイセ4時間
時代背景:現代日本
KP難易度:★☆☆☆☆
PL難易度:★☆☆☆☆
システム:オープン
ウチがアドリブが効かない分、
ウチの為だけの記述方法になっていて、
人によってはKPし辛いかもしれないっス
ウチが想定した行動とセリフに合わせて全部文章に起こしてあるっスから、
余り頭は使わずにできると思うっス
<説明>
「⇒」の右に書かれた内容はトリガーっス
トリガーが発生したら次の行の内容で処理するっス
処理内容の範囲はインデントで表現してるっス
1 あらすじ(KP向け)
探索者から遠く離れた町。
そこにある教会では無機質から原ショゴスを誕生させる儀式を行っている。
言うことを聞かない使えない原ショゴスは処分と称して無機質に戻されていた。
たまたまそれを見かけた1体の原ショゴスはいずれ自分も処分されると怖くなり、教会を抜け出す。
その際に20歳女性の黒山殊音に脱走を助けられる。
その後も教会からの追っ手が原ショゴスを探し回っており、黒山殊音の助けを必要としていた。原ショゴスは追っ手から逃れる方法として思い浮かんだのは唯一印象強く残った黒山殊音に化けることだった。
黒山殊音として化けた原ショゴスは食べ物を盗み、漁り始めると次第に本物の黒山殊音に迷惑を掛けていく。
覚えのないことで糾弾される黒山殊音は次第に外出することが怖くなり、家に引きこもるようになった。
自分の住む町の人たちを信用できなくなった黒山殊音はこの町ではない遠くに住む知り合いの探索者、活躍を聞いた探偵の探索者に原因を突き止め、解決してもらおうと考え手紙を送る。
探索者は黒山殊音と教会のある、この遠い町にやってくる。
黒山殊音の依頼を受けた探索者は原ショゴスの行動を聞き取り調査し、やがて原ショゴスの元へと辿り着く。また、その道中で教会の人間とも接点を持ち、同じ原ショゴスを探していることが分かる。
原ショゴスは自らの顔を晒し、この顔の人物である黒山殊音に会いたいと探索者たちに伝える。
原ショゴスのお願いを聞き入れた探索者は原ショゴスを黒山殊音の前に連れて帰る。
一方、教会も町の人間の話から原ショゴスが殊音に扮していることに気付く。
原ショゴスが黒山殊音と同じ顔を見せると、黒山殊音は双子の姉妹のようだと受け入れる。
安心するのも束の間、教会は黒山殊音を誘拐する。教会の主である教祖は本物の黒山殊音を処分し、原ショゴスと入れ替えるつもりでいた。
探索者は黒山殊音を救出に教会へ向かう。
教会は秘密に関わった探索者を亡き者としようとする。
探索者は自分と同じ顔を持つ原ショゴスとそれに守られた教祖と戦闘する。
教祖を戦闘不能にしたところで、探索者と教祖を囲むように原ショゴスが10人…20人とぞろぞろと増えていく。
探索者に説明するように教祖は状況を伝える。教会の全貌は教祖である魔術に精通したたった一人の人間によって作られ、残りは全て原ショゴスによって構成されていた。
原ショゴスは教祖の命令を聞くように出来ているため、教祖は探索者を殺し、自分を守るよう命令する。
しかし、戦闘不能で意識を失っている間に、周りにいる原ショゴス達は黒山殊音の顔を持つ原ショゴスを主として変えていた。
黒山殊音の顔を持つ原ショゴスの考えの元、原ショゴスは教祖を殺す。
探索者たちを囲っていた原ショゴス達はその場から散り散りになると各々何処かへと去って行く。
黒山殊音の顔を持つ原ショゴスだけがその場に残ると探索者と黒山殊音に話しかける。
原ショゴスは自由を得たけれど生きるとは何かも知らない。原ショゴス達をどこか人々の眼の届かないところへ連れて、無垢な心のまま、その身体が朽ちていくのを見守ると決意する。
原ショゴス達は禁断の果実を食べることなく、楽園で平和に過ごすアダムとイブの様な一生を迎えるだろう。
2 募集要項
推奨人数:2人
プレイ時間:ボイセ4時間
時代背景:現代日本
シナリオ:オープン
ロスト:可能性あり
必須技能:戦闘技能
推奨技能:交渉技能、<医学>
戦闘:あり
PLの条件:探偵または20歳女性の友人でも違和感がないもの。更にその探索者の同僚、友人。(黒山殊音の友達である探索者の友達、等)
紹介文:遠い街にいる20歳女性から手紙が送られ、身に覚えのないことで町民に責め立てられていると相談を持ちかけられます。
3 登場人物
3.1 黒山 殊音(くろやま ことね)
関係:今回の依頼者
性別:女性 年齢:20 職業:魔女を愛してやまないオカルト作家
HP:12 MP:8 SAN:40 ダメージボーナス:0 STR:7 DEX:5 INT:11 CON:10 APP:17 POW:8 SIZ:13 EDU:20 アイディア:55 幸運:40 知識:99
技能:<運転(自動車)>50 <オカルト>80 <芸術(文才)>83 <芸術(演技)>70 <精神分析>50 <図書館>90 <他の言語(英語)>50 <他の言語(ラテン語)>50 <目星>80
特殊:黒山殊音に対して【心理学】で疑うしぐさを見せた場合、心理学を行ったプレイヤーに対して嫌な顔を見せます。(好感度:-1D2 ※ダイス音をわざと探索者に聞かせるように振ります。また、多人数で同時に心理学を行った場合は、その人数分振ります。)
詳しくは章「補足」-「黒山殊音に対し【心理学】を使うことについて」を参照してください。
3.2 四十八坂 芒(よそやさか すすき)
関係:今回の依頼者(黒山 殊音)の友人。
性別:女性 年齢:20 職業:ミュージシャン
HP:15 MP:18 SAN:75 ダメージボーナス:0
STR:8 DEX:15 INT:16 CON:15 APP:17 POW:15 SIZ:15 EDU:15 アイディア:80 幸運:40 知識:75
技能:<応急手当>65 <聞き耳>85 <芸術(音楽)>85 <信用>65 <精神分析>50 <跳躍>70 <投擲>70 <他の言語(英語)>70 <目星>70
3.3 黄色いコートの女性(原ショゴス)
関係:今回の依頼者(黒山 殊音)のドッペルゲンガー。教祖によって創られた原ショゴス。
性別:女性 年齢:20 職業:なし
HP:17 MP:- SAN:- ダメージボーナス:3D6 STR:43 DEX:15 INT:16 CON:25 APP:17 POW:20 SIZ:13 EDU:10 アイディア:80 幸運:99 知識:50
武器:蝕肢50% [DB×1] ダメージ。噛み付き25% [1/2DB] ダメージ。(通常原ショゴスが持っている「押し潰し100% [DB×2]ダメージ」は人間サイズの為使わない)
装甲:なし。1ラウンド毎にHP2回復。
技能:なし。
SANチェック:1/1D10。
3.4 祭服の男(原ショゴス)
関係:教祖に従順な原ショゴス。
性別:男 年齢:35 職業:新興宗教教団員
HP:13 MP:- SAN:- ダメージボーナス:1D6 STR:25 DEX:15 INT:10 CON:22 APP:10 POW:10 SIZ:15 EDU:6 アイディア:50 幸運:50 知識:30
武器:蝕肢50% [DB×1] ダメージ。噛み付き25% [1/2DB] ダメージ。(通常原ショゴスが持っている「押し潰し100% [DB×2]ダメージ」は人間サイズの為使わない)
装甲:なし。1ラウンド毎にHP2回復。
技能:なし。
SANチェック:1/1D10。
3.5 教祖
関係:ドッペルゲンガー(原ショゴス)を作り出した張本人。姿は祭服の男と同じ。
性別:男性 年齢:35 職業:新興宗教教祖
HP:13 MP:11 SAN:0 ダメージボーナス:1D4 STR:11 DEX:15 INT:14 CON:12 APP:10 POW:11 SIZ:15 EDU:15 アイディア:70 幸運:55 知識:75
経理:85 物理学:80 化学:79 生物学:60 オカルト:60 図書館:60 他の言語(英語):60 聞き耳:60 目星:60
呪文:古代の儀式(原ショゴスを生み出す為の儀式)
4 マップ
4.1 蓮田市
4.2 黒山殊音の家
4.3 教会1階
4.4 教会2階
4.5 教会3階
5 アイテム
5.1 地図
地図には事細かに記載されており、「駅」「福引会場」「教会」「公園」「黒山殊音の家」「四十八坂芒の家」「青果物店」「飲食店」以外にも記載されています。
分かりやすく今回のシナリオで使用する部分だけを載せている。
5.2 オカルト入門の本
本シナリオのオリジナルアイテム。オカルト知識がない人でも分かりやすく丁寧に説明が書かれています。例えどんな熟練者でも初心を振り返ることは大事である為、技能値がどんなに高い人でもこの入門書に助けられる(はず)。
効果:技能【オカルト】の成功値を+5%します。
5.3 鍵
飲食店裏の死体から見つかります。
効果:教会の用具室の鍵を開けることができます。
5.4 ペアチケット旅行券
「発行元:SAN値回復委員会」と書かれています。
効果:クリア時に持っているとSAN値回復。
5.5 ハンカチ
効果:特になし。
自治会のゆるキャラ“ハスタくん”がプリントされているハンカチを手に入れる。
※ハスタくん
5.6 木斧
効果:基本ルールブックP70参照
5.7 燭台(蝋燭)
本シナリオのオリジナルアイテム。燃えているたいまつと同じ扱いとする。
効果:基本ルールブックP70参照
5.8 肉切り包丁
効果:基本ルールブックP70参照
5.9 一般的な調理器具、小道具
武器になる日常品。
効果:2010ルールブックP35参照(以下はメモ用に転記)
6 導入
探索者の元に一通の封筒が届きます。
封筒の中身は地図と手紙が入っており、以下の文が書かれています。
⇒探偵かそれに近い職業へ宛てた手紙の場合
『突然の手紙で失礼致します。
貴方のご活躍を耳にしまして、その腕を見込んで調査の依頼をお願いしたく存じます。
お願いしたい事と関係して、現在外出を控えておりますので、詳しい話は家まで御越し頂ければと思います。
家までの地図を同封致します。 黒山 殊音』
⇒黒山殊音の友人へ宛てた手紙の場合
『如何お過ごしでしょうか。
私の方は仕事もひと段落して自分の時間が取れるようになりました。
実は困ったことがあり、最近は外出を控えている状態です。もし良かったら家で美味しいお茶菓子を用意するので相談に乗って頂けませんか。
家までの地図も同封しておきますね。 黒山 殊音』
地図には目印として「駅」「福引会場」「教会」「公園」「黒山殊音の家」が予め書かれており、「四十八坂芒の家」「青果物店」「飲食店」は記載されていません。
手紙を受け取った探索者で友人でない場合は【知識】判定します。
⇒黒山殊音の友人であるか、【知識】で成功した場合
手紙を受け取った探索者は黒山殊音という名前を見て、魔女を愛してやまないオカルト作家と何処かの雑誌で写真付きで紹介されていたことを思い出します。
(探索者は黒山殊音の顔を知ります。)
⇒黒山殊音のいる町へ向かう
探索者は遠出の為、地図の右下にある駅に辿り着きます。
駅前では自治会用のテントが張られており、探索者の身長と同じくらい大きなガラガラと手で回すドラム式の抽選器が目につきます。福引会場の女性が時折ハンドベルを鳴らしています。
⇒黒山殊音の家に向かう
黒山殊音から手紙を受け取った探索者は地図に書かれた家へと向かいます。
黒山殊音の顔を知っている探索者は【目星】判定します。
⇒【目星】で成功した場合
向かう途中で、ぶかぶかの黄色いコートを着込んだ黒山殊音と思わしき人物を見かけますが、人混みに紛れて見失います。
手紙に書かれていた「外出を控えている」ことを思い出し、他人のそら似くらいに思います。
地図の通り進むと、屋根の勾配が高い西洋風の造りが印象的で、庭には一本の樹のある黒山殊音の家に辿り着きます。
呼び鈴を鳴らすと黒山殊音が顔を出します。
黒山殊音「わざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。どうぞこちらへ」
と言うと、テーブルと椅子の並んだリビングへと通されます。
黒山殊音が奥の台所からお茶と茶菓子をカチャカチャと用意すると探索者の前に差し出し、本題を切り出します。
黒山殊音「手紙にも書きましたが相談があります。
最近、私の周りで不思議なことが起こっていて、参っています。
不思議な事というのは私の身に覚えがないことを私がしているらしいんです。
近所に住んでいる友人の話だと物を盗んでいるところを見かけたとか、ゴミを漁っているところを見かけたとか…。
私はそんなことしてないと言ったんですけど、顔を見間違える訳ない!と頑なに否定されて、困ってることがあるなら相談して欲しいと迫られました。友人のその真剣な表情はとても嘘を言っているように思えませんでした。
日が経ってからもまた見かけたといった話が続き、そのうち私の顔を見て怒鳴ってくる人も出てきて、怖くて家から出られなくなってしまいました。
どうか私の代わりに真相を確かめてくれませんか?」
探索者に引き受けて貰う。(断られる場合はあの手この手で引き受けて貰おうとする。)
黒山殊音 「外出しないもので、私からは特に手掛かりといったものはありませんが、先ほど話した友人に話を聞いたら何か分かるかもしれません。」
殊音は少しその場から離れると1枚のCDを持ってきて、探索者に手渡します。
黒山殊音「友人はミュージシャンをやっていてこのCDに映ってる子、四十八坂芒という名前の子で、家はここにあります。」
と手紙に同封された地図を指して教えます。
黒山殊音「どうかよろしくお願いします。」
7 探索パート
7.1 黒山殊音の家
7.1.1 リビング
テーブルと椅子が並べられ、奥にキッチンがある一般的な部屋で、掃出し窓から立派な木が見え、掃出し窓から庭へと出ることができます。他には書斎と書かれた扉、寝室と書かれた扉があります。
⇒書斎または寝室について入ろうとする。
黒山殊音「そこは私の仕事部屋(または寝室)なので入らないようにしてくださいね。」
⇒【言いくるめ】や【信用】
しぶしぶ入室を許可してくれます。
⇒町の教会について聞く。
黒山殊音「最近この町にできた新興宗教ですね。結構な速度でその人数を増やしているみたいで、信仰熱心で教祖の言葉に従順な人ばかりみたいです。何を崇めているとかは門外不出で未だ謎で包まれていますね。」
7.1.2 庭
庭には一本の立派な樹があり、遠目には赤い果実がついているのが分かります。近づいて見るとリンゴの実が成っていることから、リンゴの樹だと一目でわかります。
黒山殊音「私のファンからのプレゼントで、なんでも“アダムとイブが食べた禁断の果実”の接ぎ木なんだとか…。このリンゴを食べた二人は知恵を得た後に神様に楽園から追放されたって神話が有名ですよね。折角だから食べていきます?足りない知恵が得られたりしてね~。まぁ、私も本気では信じていないけど、もし本当だったらと思うと面白いですよね。」
⇒食べたいと伝える
良さそうなリンゴを適当に切り取って探索者に手渡してくれます。
⇒【目星】やリンゴの枝を良く見る
林檎の枝にヘタだけが残された状態のものを見つけます。下手の先は噛み切られたような跡があり、まるで枝に着いたまま林檎を丸ごと齧って食べたように感じます。
⇒黒山殊音にヘタについて話す
黒山殊音「本当ですね、これを食べて知恵が付いてると良いですね。」
7.1.3 寝室
足の付いた大きなベッドが部屋の真ん中にあり、綺麗にシーツが敷かれています。また、壁を背にいくつかタンスがあります。
黒山殊音「私も女の子ですし、あまり物色しないでください。」
と恥ずかしそうに言います。
⇒ベッドの上を調べた場合
綺麗に敷かれたシーツと布団から良い香りがします。
⇒ベッドの下を調べた場合
探索者は<幸運>を振る。
⇒<幸運>に成功した場合
何も見つかりません。
⇒<幸運>に失敗した場合
布地の少ない紐の付いた恥ずかしい下着が見つかります。
赤面した殊音は凄い勢いで探索者から下着を奪い取るとタンスに突っ込みます。
黒山殊音「もう良いでしょう!早く行ってくださいー!」
探索者を家から追い出します。(好感度:-1D6)
⇒タンスを調べた場合
100枚はある万札が見つかります。いわゆるタンス貯金を行っていることがわかります。
7.1.4 書斎
窓には光を一切通さない厚手の遮光カーテンが掛かっていて薄暗くなっています。一般的に部屋に入ってすぐ横に部屋の明かりをつけるスイッチがあると想像できます。部屋を見渡すには一旦部屋に入ってスイッチを入れるかカーテンを開けるしかなさそうです。
黒山殊音「……本当に見るんですか?」
と探索者の様子を黒山殊音は見ています。
⇒スイッチを付けた場合
カチっと音はしますが何も起きません。(照明が切れている)
⇒カーテンを開けた場合
部屋は本棚で囲まれており、床には魔方陣のような紋様が血のようなものでおどろおどろしく描かれています。
その魔法陣に驚いた探索者はSANチェック(0/1)。
その魔法陣の中央には作業机があり、上にはノートパソコンが閉じて置いてあります。部屋の隅にはホウキ、杖、三角帽子、黒いマントと魔女を彷彿とさせるアイテムが服かけに寄り掛かるように飾られています。
黒山殊音「人に見せられる物は無いので、あまりじろじろ見ないでくださいね。」
と落ち着かない様子で、静かに探索者を見守っています。
⇒本棚について【目星】または【図書館】で目を引くものを探した場合
本棚の種類は主にオカルト系で、特に魔女に関係する本が多くあることがわかります。
ハンドブックサイズのオカルト入門と書かれた本が見つかります。オカルトの知識がなくてもこれがあれば少しは理解することができそうです。(メタ的には技能【オカルト】の成功値を+5%します。)
⇒床の魔方陣について【オカルト】で調べた場合
床の魔方陣は「成就祈願」の意味があることは分かりますが、特に効果が付与される訳ではないことがわかります。(メタ的にはこの魔法陣に対しMPを使っても何も効果がないことがわかります。)
⇒作業机について調べた場合
引き出しの中には原稿用紙、万年筆、インクといった小説家の仕事道具が一色入っています。
⇒作業机の上のノートパソコンについて調べた場合
ノートパソコンを開くと、黒山殊音が魔女として活躍するストーリーがつらつらと書かれています。段々と話に引き込まれ、時間が経つのを忘れてしまいます。やがてこれは個人で楽しんでいるものだと気付き、プライベートを除いていることが分かるでしょう。
読み終えた探索者はいつの間にか横に移動していた殊音と目が合います。殊音は探索者の耳元に口を近づけると、他の探索者に聞こえないようにこう囁きます。
黒山殊音「…感想どうでした?」
⇒好評と伝えた場合
黒山殊音は嬉しそうににっこりと笑いかけます。(好感度+1D10)
⇒不評または分からないと伝えた場合
黒山殊音は勢いよくノートパソコンを閉じ、バタンと大きな音を立てます。
黒山殊音「人のプライベートを覗いておいて、最低の人ですね。」
見下したような表情を探索者に向けます。(好感度-1D6)
7.1.5 洗面所、トイレ、バスルーム
綺麗に掃除が行き届いており、別段目を引くものはない一般的な洗面所、トイレ、バスルームとなっています。
⇒調べる場合
(KP判断で考えてください。例えば自宅を連想する等。)
7.2 四十八坂芒の家
ギターケースを担ぎ、帽子を被った女性が調度家から出掛けるところに遭遇します。
探索者は黒山殊音から渡されたCDジャケットに映っている子と同じ女性だと分かります。
⇒声を掛ける
声を掛けるとすぐに振り向いて反応します。
⇒声を掛けない
黒山殊音に渡された四十八坂芒のCDを目ざとく見つけ、反応します。
四十八坂芒「もしかして、私のファンか!?参ったな~、家まで押しかけてきちゃ困るよ~。ほら私のサイン入りのCDあげるから次からは止めてくれよ~!これからライブに行かなきゃいけないし先を急ぐから!」
四十八坂芒が鞄をごそごそすると殊音からもらったCDと同じものを人数分渡してきます。もちろんサイン入りの状態です。
⇒殊音について話す(進展がもしなければ、探索者が持っているCDが黒山殊音に渡した物と気付いたことにする)
四十八坂芒「ん?もしかして…殊音の友達か何かかな?そうだねぇ、私が殊音を見かけたのは青果物店、飲食店くらいかな。もし地図とか持ってるなら場所教えるよ。ここからだと青果物店が近いからそっちから行ってみたら良いんじゃないかな。」
地図に青果物店と飲食店の場所を教えてくれます。
四十八坂芒「殊音の知り合いと分かったら話は別!他に聞きたいことはない?」
⇒聞きたいことがない
四十八坂芒「そうか。大した力になれなくってごめんよ。
私もたまたま見かけただけで、まさか殊音が盗んだりゴミを漁るわけがないと思ってたからその時は他人のそら似だと思ったんだよね…。けど、顔を思い返すとやっぱり殊音にしか思えなくなっちゃってさ。
殊音を追い詰めるつもりはなかったんだけど、私も力になりたくて変に意固地になっちゃってさ、あれからすっかり殊音に距離を置かれるようになっちゃってね。ハハハ…。
今も噂は絶えないけど、その時の殊音が嘘をついているようにも思えなかったし見間違いだと思うようにしたんだよね。
もし、何とかしようとしてるなら、私の代わりに殊音のことを助けてあげてくれよ。
ああっと、そろそろ本気で時間がやばいから!それじゃ!よろしくね!」
そういうと四十八坂芒は何処かへ走り去っていき、すぐに姿が見えなくなります。
7.3 青果物店
旬の野菜や果物を取り扱っており、店主が1人で集客、接客を行っています。レジ近くのラジカセから音楽が流れています。
店主「いらっしゃい、いらっしゃい!人参、ジャガイモ、玉ねぎのカレーセットは1000円で特別サービスを付けちゃうぜ!」
⇒【聞き耳】やラジオを調べる。
ラジオから聞き覚えのある女性の声をした歌が聞こえます。
この歌を聞いた探索者は【アイディア】を振ります。
⇒【アイディア】成功
四十八坂芒の声であることに気が付きます。(リアルアイディアで気付いてもOKです。)
⇒黒山殊音について聞く。
店主「喉まで出かかってるんだけど思い出せそうで思い出せないなぁ。あ~、何か買ってくれたら勢いで思い出せそうな気がするんだけどな~。」
店主は考える素振りを見せながらこちらの様子を窺います。
⇒【心理学】を振って成功
何かを注文するまでは決して他の話は絶対にしないという強い意志を感じます。
⇒四十八坂芒について聞く。
店主「知ってるのかい?お、俺は別にファンでも何でもないんだけどよ!
彼女はこの町の生まれでミュージシャンとして頑張ってくれててね!音楽界の兎って二つ名が付けられたみたいだぜ!
というのも、バスケが趣味で、ジャンプシュートが得意とかでその様子がまるで兎が跳ねてる様に見えるとか。名前のススキっていうのが秋の七草のひとつで月見のイメージも相まってイメージが兎になったらしいぜ。
彼女の家が近所らしくて、良く俺の店に寄ってくれて、これがまた可愛いんだよな~。」
⇒【心理学】を振って成功
四十八坂芒の大ファンであることを確信します。
⇒四十八坂芒のサイン入りCDを渡す
店主は衝撃を受けたような顔をします。
店主「ま、まさかこここ、これは四十八坂芒サイン入りCDってやつか!!?
い、いや俺はファンじゃないからこれを渡されたから何って訳じゃないけどよ!くれるのか?
代わりと言っちゃ全然足りないかもしれないけどよ!」
そういうと人参・ジャガイモ・玉ねぎを次々と袋に入れていきます。袋一杯で一人ではとても使い切れない量になります。
店主「こいつをやるぜ!それに特別サービスで答えられる範囲でなら質問に答えてやるぜ?」
⇒カレーセットを買う。
店主「毎度!」
そういうと人参・ジャガイモ・玉ねぎを次々と袋に入れていきます。袋一杯で一人ではとても使い切れない量になります。
店主「特別サービスで答えられる範囲でなら質問に答えてやるぜ?」
⇒黒山殊音について聞く。
店主「ああ、あんの泥棒か。全く困ったやつだよ。俺も1回くらいなら目を瞑ってやろうと思ったら、連日2度3度と繰り返し盗んでいきやがって、根っからの盗人だね。
あんな可愛い顔して盗みを働くんだから人間見た目で判断しちゃダメってことだろうね。
あんたら、あいつの友達なら何とか言ってやってくれよ。
実は今朝もちょっと目を離した隙にリンゴを両手いっぱいに抱えて走って行きやがってよ。
見た目に反して逃げ足が速くてすぐに見失っちまったよ。
調度この通りの南の方へ逃げて曲がったところまでは見ていたんだが、北東か東かまでは分からなかったな。
他に何か聞きたいことはあるかい?」
⇒店主との話を終える。
祭服を着た男が店主へ話しかける。
祭服の男「店主。黄色いコートを羽織った怪しい人物を見かけなかったか?」
店主「あん?あんた、買うもの買ってから…っ!?」
祭服の男が店主を睨みつけると店主はペラペラと話し始めた。
店主「ああ、あの泥棒かい。全く困ったやつだよ。さっきもそこのお客にも話していたところだよ。」
祭服の男は探索者の方をじっとのぞき込みます。執拗に撫でまわすような視線から何か得体のしれない恐怖を本能的に感じ、探索者は動けなくなります。男は探索者と視線を合わせると男の顔をハッキリと認識します。
⇒飲食店の裏で祭服の男の死体を見ていた場合
飲食店の裏で見た祭服の男の死体と全く同じ顔であることが分かります。
死んでいるはずの人間に出会った探索者はSANチェック(1/1D6+1)
⇒他人の心を探れる技能(【心理学】【人類学】【精神分析】等)を使う場合
探索者は男の顔を見ると無表情で、感情というものが完全に抜け落ちているように感じます。
祭服の男は店主へ向きなおすと話を続けます。話している内容は先ほどの探索者と同様、店主が一方的に祭服の男にペラペラと話しかけていると分かります。
⇒祭服の男に話しかける。
祭服の男「もし黄色いコートを羽織った怪しい人物を見かけたら教えろ。私から教えることは何もない。」
7.4 飲食店
外観は一般的な飲食店のようで、ガラス越しに外からでも中の様子が見えます。
表に出ている看板には“メニューは家庭料理、味はプロの味”と書いてあります。
⇒店内に入る
店内に入るとカウンターの奥で歳のいった男性がぶつぶつと何か独り言を呟いているのが見えます。
探索者は【聞き耳】を振ります。
⇒【聞き耳】で成功した場合
歳のいった男性「あー、やっちゃったよ。材料費全部発注ミスで豆腐になっちまったよぉ。」
と歳のいった男性がぼやいていると分かります。
カウンターの奥から歳のいった女性が現れ、探索者をテーブル席へと案内します。
歳のいった女性「ご注文は何にしますか?当店人気メニューのプロ・カレーライス1000円は材料が不足していて今は中止しています。今は麻婆豆腐に中華スープとライスが付いたプロ・麻婆豆腐セット1500円がお勧めです。」
⇒黒山殊音について聞く。
歳のいった女性「喉まで出かかってるけど思い出せそうで思い出せないねぇ。あ~、何か注文してくれたら勢いで思い出せそうな気がするんだけどね~。」
歳のいった女性は考える素振りを見せながらこちらの様子を窺います。
⇒【心理学】
何かを注文するまでは決して他の話は絶対にしないという強い意志を感じます。
⇒カレーセットを渡す。
歳のいった女性「あらま!?もしかしてくれるの!?こんなに沢山!?これがあればカレーライスも作れて持ち直せますよ!」
店の奥へと行くと男性の歓喜の声が店内に響き渡ります。
歳のいった女性が男性を引き連れて探索者の元へ戻ってきます。
歳のいった男性「ありがとうございます。実は当店で一番の稼ぎ頭のカレーが作れなくて困っていたところなんです。料金は入りません。好きなだけ食べて行ってください!それと、何か聞きたそうにしているとか。私達で答えられることなら何でもお答えしましょう。」
(黒山殊音について質問ができるようになります。)
⇒麻婆豆腐セット特別サービス付きを注文する。
歳のいった女性「まいど」
そういうと店の奥へ引っ込んでいくと、マーボー豆腐セットを探索者の前へ提供する。
歳のいった女性「答えられる範囲で良ければ質問に答えますよ。」
(黒山殊音について質問ができるようになります。)
⇒黒山殊音についてきく
歳のいった女性「ああ、あの乞食っ子かい。全く、破棄した袋を破って周りにぶちまけて行くもんだからカラスやら野良猫やらが集まって大変だったよ。
ゴミを漁るんじゃないよって怒鳴ったら走って逃げて行ったねぇ。正面の通りを東の方へ走って、南西の通りに行ったよ。
そういえば今朝方、店の裏が騒がしかったね。もしかして、またゴミ漁りでもしていなきゃいいけどねぇ。」
⇒飲食店を出ようとする。
歳のいった男性が奥から沢山の豆腐が入った袋を探索者の前に持ってくる。
歳のいった男性「実は豆腐を買い過ぎてしまってね。このまま使い切れずに傷んでしまうのでよかったらお礼と思って貰ってください。」
7.4.1 飲食店の裏
飲食店の建物と隣接する建物の間には裏道があり、日が差し込まない為薄暗くなっています。室外機や換気扇の排気口が建物から突出して並び、どこか息苦しく感じます。
飲食店の裏側には幅2メートル、奥行と高さは1メートルと人がすっぽり入れる程大きな鉄製のゴミ箱が置いてあります。その鉄製のゴミ箱には蓋がついており、蓋は開いている状態で、ガサゴソと物音がしています。
⇒ゴミ箱に近づく
近づいた探索者は【聞き耳】を振ります。
⇒【聞き耳】に成功した場合
血の臭いを感じとります。ゴミ箱に近づくにつれて血の臭いが強くなっていくことが分かります。
⇒ゴミ箱を除き込む場合
ゴミ箱を覗きこむと黒い物体が一面を覆っています。その黒い物体には大量の目玉があり、ギョロっとすべての視線が探索者へと向きます。
黒い物体が探索者へと伸びていきます。
カー!カー!と煩く鳴く声を聞いて、それらはカラスだったのだと探索者は気付きます。
カラスの居なくなったゴミ箱の中から強烈な腐臭が探索者を襲います。そこにはボロボロになった祭服を着た男の死体が転がっており、随分と肉を食い散らかされたのか骨がところどころ見え、カラスの飛び立つ勢いで顔が動き、見開かれた目は探索者の方を向いて見ているように感じます。
⇒青果物店で祭服の男と会っていない場合
そんな凄惨な死体を発見した探索者はSANチェック(1/1D4+1)
⇒青果物店で祭服の男と会っていた場合
青果物店で祭服の男と出会った探索者は、その時出会った男と全く同じ顔であることが分かります。
先ほど会ったことのある見知った人間の死体に強いショックを受けた探索者はSANチェック(1/1D6+1)
⇒死体を調べる場合
胸には手が入る程大きく抉られていることに気が付き、それが致命傷であることがわかります。
また、ポケットが膨らんでいるのに気が付きます。
⇒ポケットを探る場合
鍵が入っているのに気が付きます。(教会の用具室に入るのに使えます。)
⇒胸の傷を調べる場合
胸の傷は貫通しているのに気が付きます。胸から背中まで貫通する程の暴力的な力に任せて何かが通ったような傷口だと気付きます。人体を貫通することにどれほどの力が必要か、在りえないことだと考えが至り、未だ見ぬ得体の知れない驚異的な力の存在に気が付き、探索者はSANチェック(1/1D2)
7.5 公園
公園に辿り着くとまず、白い自治会用テントが張られているのに気が付きます。テント内ではコンロの上に大きな寸胴鍋が置かれ、炊き出しを行っている様子が見えます。他には滑り台やブランコ、ウンテイといった遊具があり、奥に用具入れ用の小さな小屋があります。
自治会テント付近には暇そうにしている自治会の青年がいます。
⇒自治会の青年に話しかける
自治会の青年「すみませんね。今は炊き出しは中止しています。まぁ、始まってもいませんけどね。
折角だから僕の愚痴に付き合ってくださいよ。実は発注していた材料のうち、豆腐を買い占めた人がいるとかで予定していた料理ができないそうなんですよ。他の料理に変更したら良いのではありませんか、と進言してみたんですが、上の人間が毎年恒例で出している料理だから絶対に変えたくないの一点張りだし。無駄に時間だけが過ぎていくし、頭が固い連中には参ってしまいますよ。」
⇒黒山殊音について聞く
自治会の青年「今はイライラしていて、他人の相談事に乗れるほどの余裕はありませんね。」
⇒豆腐を渡す。
自治会の青年「え!?こんなに沢山頂けるんですか!?もしかして買い占めた人ってあなたではないですよね?
何はともあれ、これだけあれば予定していた料理も作れるし、頭の固い連中も納得させられますよ!
お礼と言ってはあまり良い物ではありませんけれど、福引券を差し上げます。
すぐに準備するので、福引を回して戻ってきた頃には調度炊き出しも出来上がってると思いますよ。」
そういうと自治会の青年はさっさと自治会用テントへと走っていきます。
⇒福引を引いた後に再度公園に来る。
炊き出しが行われており、探索者に気付いた自治会の青年が声を掛けてきます。
自治会の青年「いやーありがとうございます。上の人間も納得してくれてご覧の通り、やっと始めることができました。これ、毎年恒例の豚汁です、どうぞ。」
そういうと探索者の人数分、器に入った豚汁を手渡します。
自治会の青年「おかわりが欲しくなったら僕に言ってください。お腹いっぱいになるまでお渡ししますよ!」
(探索者にならいくらでも豚汁を注ぎ足してくれます。)
自治会の青年「そういえば、先ほど何か聞きたがっていませんでしたか?今なら喜んで相談事を引き受けますよ!」
⇒黒山殊音について聞く。
自治会の青年「その人物かどうかは定かではありませんが、調度あなた達位の背の人物がこの公園の奥にある用具入れの小屋の方に向かっているのを見かけましたよ。」
7.5.1 用具入れの小屋
外観は体育倉庫の様な大きさで、人が入るスペースは十分にある小屋があります。雨ざらしのまま放置されているのか、壁は砂埃で汚れています。小屋にはドアがついており、スライド式の簡易鍵が掛かっています。
⇒【目星】またはスライド式簡易錠を調べる。
スライド式の簡易錠は開いています。
⇒【目星】またはドアの取手を調べる。
赤黒く変色した何かが取手部分に付着しています。
⇒【医学】で赤黒く変色したものを調べる。
赤黒く変色した何かは、血だと気が付きます。
⇒ドアを開ける。
スライド式簡易鍵が外れているにも関わらず、小屋の内側で何かが引っかかっているのか、ドアを開けようとしてもびくともしません。
手にぬめりとした感触を覚えます。
⇒手を確認する場合
ベットリと血が付着しています。
⇒予め血に気が付いていなかった場合
突然自分の手が赤黒い血に染まったことに驚いた探索者はSANチェック(1/0)
⇒【聞き耳】などで中の音を調べる。
微かに呼吸音が聞こえ、息を押し殺しているように感じます。
しばらく耳を傾けていると「ぐーっ」とお腹が鳴るような音がします。
⇒豚汁(匂いのする食べ物)を持って近づく。(食べ物を渡そうとする行動でも良い)
次章「ドッペルゲンガーとの遭遇」へ続きます。
7.6 福引会場
福引会場に近づくと、自治会用のテントが張られており、探索者の身長と同じくらい大きなガラガラと手で回すドラム式の抽選器が目につきます。
福引会場の女性が時折ハンドベルを鳴らしています。
⇒公園で福引券をもらう前に、黒山殊音について聞く
福引会場の女性「今忙しいから後にしてくれませんか。毎年この時間だと公園で炊き出しが始まって、そっちに人が流れて余裕ができるはずなのに、これじゃ全然休憩も取れないわ!」
⇒公園でお礼に貰った福引券を使う
福引会場の女性「私の彼氏から聞きましたよ!何でも公園でトラブルがあって、それを解決してくれた人に福引券を渡したって。どうぞどうぞ、チケットの枚数だけ引いて行ってください~。」
探索者は【幸運】で判定します。
⇒成功した場合
ペアチケット旅行券を手に入れます。
裏側には“発行元:SAN値回復委員会”と記載されています。
⇒失敗した場合
自治会のゆるキャラ“ハス太くん”がプリントされているハンカチを手に入れる。
⇒黒山殊音について聞く
福引会場の女性「私が見た訳ではないけれど、そこの通りを北に向かって最初のT字路を西に曲がったところを見かけたって友達が話してたわ。」
7.7 教会
敷地内は広い芝が広がっており、外の周りを針葉樹が囲っています。芝を進むと白色をベースとした高さのある建物があり、およそ3階の高さにでかでかと巨大なステンドガラスが張られ主張しています。正面には入口があります。
⇒昼間(探索パート)の場合
正面入り口の両脇には祭服を着た男たちが立っており、探索者に気が付くと話しかけてきます。
教会入口の男「一般の立ち入りは禁止している。ちなみに、もし黄色いコートを羽織った怪しい人物を見かけたら教えろ。」
⇒殊音のことを聞く
教会入口の男「私から教えることは何もない。」
8 ドッペルゲンガーとの遭遇
いつの間にか日は傾き始め、オレンジの明かりが探索者を温かく照らしています。
公園の用具入れの小屋のドアがゆっくりと開きます。
ドアが開くとぶかぶかの黄色いコートを羽織り、フードを深々と被った人がゆっくりと顔を出します。フードを被っている為、顔は見えません。探索者の持つ豚汁(食べ物)をじっと向いてます。
⇒フードを取ったり、顔を覗き込んだりした場合
フードの下からは良く知った人物、黒山殊音と同じ顔をしていることがわかります。
顔だけでなく黒山殊音と同じ髪型、同じ体格、何から何まで全て同じ特徴を持った人物と遭遇するという非現実的な存在を認識します。これを目の当たりにした探索者はSANチェック(0/1)
⇒黄色いコートの女性の右手を見た場合
真っ赤に染まった右腕に気が付きます。
⇒飲食店の裏で祭服の男の死体の貫通に気付いていた場合
祭服の男を殺した驚異的な存在が、目の前の黄色いコートの女性によって行われたのではないかという考えに至ります。右手を見つめていると、その手が自分の胸の位置に上がり、気が付くと抉られてしまう。そんな恐ろしい想像をしてしまいSANチェック(0/1D2)
⇒豚汁(食べ物)を与える。
素直に食べようと探索者の方へ近寄ってきます。
黄色いコートの女性を見た探索者は【目星】を振ります。
⇒【目星】に成功
黄色いコートの右腕の袖口に赤黒いものが付着しているのに気が付きます。
食べ物を受け取ると小屋の中に戻り、道具の使い方が分からないのか、素手や直接口で食べます。
⇒黄色いコートの女性が自分で食べる等して右手を探索者に見せた場合
本章の「⇒黄色いコートの女性の右手を見た場合」に従ってSANチェックを実施。
空腹を満たしてくれた探索者に対して心を開きます。
黄色いコートの女性「貴方は良い人ですね。良い人になら話して良いかも。こっち、この中に入ってくれたら話します。」
黄色いコートの女性は小屋に入っていきます。
⇒小屋に入る。
小屋に入ると奥に黄色いコートの女性がいます。
黄色いコートの女性は探索者が小屋に入ったのを見るとドアが開けっ放しの場合は閉めるように、落ち着きなく言います。
ドアを閉めたことを確認すると黄色いコートの女性はフード取ります。
⇒まだ顔を見ていなかった場合
本章の「⇒フードを取ったり、顔を覗き込んだりした場合」に従ってSANチェックを実施。
黄色いコートの女性「この顔の人を知りませんか?
この顔の人に助けられた事があって、お礼を言いたいんです。
助けて貰えた時、すごく安心して、また会いたいんです。
もし知っていたら連れていってください。」
⇒黄色いコートの女性の正体について聞く
黄色いコートの女性「良い人になら…教えますね。実は私は人間ではありません。もし信じてくれないのなら証拠を見せします。」
⇒証拠を見せるように言った場合
黄色いコートの女性「では証拠を御見せします。」
黄色いコートの女性は黒山殊音の顔で探索者の顔に近づくと、じっと見つめてきます。
黄色いコートの女性「では見ていてください。」
そういうと黒山殊音の顔がぐにゃぐにゃと目、鼻、口が流動し、あっという間に顔が顔とは認識できなくなります。まるで顔のパーツが散らかったような頭になると、今度は少しずつパズルのように目が作られ、次は口が作られ、鼻が作られます。出来上がったその顔は探索者と全く同じ顔になっています。
黄色いコートの探索者「こんなところでどうでしょうか、他にも腕や目、口も増やせますが…信じてくれましたか?」
生物という枠組みを超えた、あまりに現実離れした光景を目の当たりにした探索者はSANチェック(1/1D10)
⇒黄色いコートの女性を連れて黒山殊音の家以外に行く場合
行先の周りを祭服の男がうろついています。
祭服の男に気付いたのか黄色いコートの女性は震えあがります。
(倒すか、他のところに一度寄ってから再度行ったり、遠回りしたりしてから行くなどしてください。祭服の男に対して黄色いコートの女性は震えあがり、動けなくなります。)
⇒“黄色いコートの女性を黒山殊音の家まで連れて行く”場合
「黄色いコートの女性を黒山殊音の元へ連れていった場合」へ続きます。
⇒“祭服の男に教える”場合
「黄色いコートの女性について教会の人間に教えた場合」へ続きます。
8.1 黄色いコートの女性を黒山殊音の元へ連れていった場合
日は秒単位で地平線へと消えていき、外は青みを増し、一等星と月明かりが空に見えます。
黄色いコートの女性を黒山殊音の家まで連れてきた探索者は呼び鈴を鳴らすと黒山殊音が出迎えてくれます。
黒山殊音「お帰りなさい、どうでしたか?何か手掛かりは掴めましたか?」
黒山殊音は黄色いコートを羽織った人物に気がつきます。
黒山殊音「あなたはあの時の…確か一週間程前に会いましたよね。
黄色いコートを羽織ったこの方が怖そうな男に追われていたところを見かけて、助けてあげなくっちゃと思って、とっさに路地裏に引っ張ってあげて、それで男には全然違う方向に逃げましたって言って助けてあげたんですよ。
…でも何でこの方を連れてきたんですか?私の依頼とどう関係するんでしょうか?」
黄色いコートの女性「あの、お礼が言いたくて。」
黒山殊音「とりあえず上がってください。」
先ほどと同じリビングに通すと黒山殊音は台所へ向かい、戻ってくると全員分のお茶と剥いたリンゴを用意します。
黒山殊音「調度お茶菓子がなくなってしまって、代わりに庭で取れたリンゴです。」
一口お茶を飲み、落ち着くと黄色いコートの女性が黒山殊音の方を向きます。
黄色いコートの女性「あの、あの時はありがとうございます。」
黒山殊音「いえ、助けになれたなら良かったです。ところで…そのコート脱がないんですか?」
⇒黄色いコートの女性の顔を黒山殊音に見せた場合
自分と全く同じ顔の人物と出会った事に対して黒山殊音は驚いた顔をします。
⇒黄色いコートの正体、事の発端は黄色いコートの女性と説明する。
黒山殊音「まさか本当に私が他に居るなんて!何か、双子の姉妹ってこんな気持ちなんですかね~。
もう困らせたり、悪い事しちゃダメですよ。」
黄色いコートの女性は下を向いてしょんぼりしているように見えます。
黒山殊音「家のリンゴは “アダムとイブが食べた禁断の果実”の接ぎ木なんだとかで、リンゴを食べた二人は善悪の知恵を得たって神話があるんですよ。
このリンゴにそんな力はありませんけど、代わりに一緒にリンゴを食べながら、良い事と悪い事とか、色々教えますよ。それにほとぼりが冷めるまで結局町へは出かけられないし、良い話し相手になってね。」
そういうと黄色いコートの女性の顔がぱっと明るくなります。
黒山殊音「そうだ、家でずっとコートを着てるって言うのも変だし、ちょっと待ってね。私と同じ体格だったら私の服も着られるよね!ちょっと取ってきますね!」
そういうと黒山殊音は寝室へ入っていきます。
すると寝室の方から大きくガシャーンという硝子が割れる音が響きます。
黄色いコートの女性「私と勘違いされて…教会に攫われた……?教会…怖い…行きたくない…。」
黄色いコートの女性は身震いし、動悸も激しく心ここにあらずという様子で動けそうにありません。
⇒励ましたりした場合
黄色いコートの女性「あ…ありがとうございます…。少し…一人にさせてください…。」
そう言って体を震わせて動けそうにありません。
⇒寝室へ入る。
窓が大きく割られ、窓辺には木斧が落ちており、それで窓を割ったとわかります。
そこに黒山殊音の姿はありません。
代わりに祭服を着た男が立ち、探索者を睨みます。
⇒【目星】や窓の外をみた場合
祭服を着た男が黒山殊音を抱えて庭から道へ走って出ていくのが見えます。
次章「黒山殊音家戦闘」へ続きます。
8.2 黄色いコートの女性について教会の人間に教えた場合
⇒祭服の男に黄色いコートの女性の居場所を知っていることを伝えた場合
祭服の男「何処にいる?」
これしか言わず、探索者に執拗に問いかけます。
⇒祭服の男に居場所を伝えた場合
祭服の男に黄色いコートの女性の居場所を伝えるとすぐに祭服の男は走って向かっていきます。
黄色いコートの女性を確認した祭服の男は顔を鷲掴みにし、壁へと押し付けます。
黄色いコートの女性「何で?何で何で何で何で何で!?嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
祭服の男は懐からスタンガンのようなものを取り出すと黄色いコートの女性に突き付けます。
鳴り止まない彼女の困惑と恐怖の声が探索者の耳に残ります。
目の前で行われる異常な光景に探索者はSANチェック(0/1D4)
何度も痙攣をおこし、やがて何も反応を返さなくなったのを確認すると祭服の男は肩にドッペルゲンガーを抱え上げます。
祭服の男「この事は他言無用で。」
礼も言わず、祭服の男は教会の方へと向かっていきます。
章「エンディング」-「教会に黄色いコートの女性を引き渡して終えた」に続きます。
9 黒山殊音家戦闘
祭服の男「お前に用はない。だが、見られてしまったからには殺すしかない…。」
祭服の男と戦闘開始です。
⇒探索者が負けた場合
祭服の男はリビングの方へと入って行くと、黄色いコートの女性に向かって言います。
祭服の男「伝言だ。お前は今より黒山殊音として生活しろ。ここの後始末はお前に任せた。」
そういうと祭服の男は再び寝室へ戻り、割った窓から出て行きます。
入れ違いで何処からかバタバタと足音が聞こえ、探索者に話しかけてきます。
四十八坂芒「おい!大丈夫か!?…良かった、目を覚ましたか。まずは怪我を治すぞ。ちなみに殊音は無事みたいだが精神状態は良くなさそうだ。」
※残っている殊音が黄色いコートの女性ということを知らない
そういうと部屋のどこからか応急セットを取り出し、探索者の手当をします。(まともな医療用具があるのでHP3回復とか、HP半分等、KP判断で調整してください。)
四十八坂芒「ライブが終わって帰るついでに様子を見に来たら凄い音がして、心配になって見に来て良かったよ。」
(四十八坂芒をお助けNPCとして参加が可能です。何も事情を知らないので、黄色いコートの女性を黒山殊音として扱います。)
10 夜の教会
10.1 庭
辺りはすっかり暗くなっています。今夜は満月で月明かりが探索者と夜の教会を照らします。
敷地内は広い芝が広がっており、外の周りを針葉樹が囲っています。芝を進むと白色をベースとした高さのある建物があり、およそ3階の高さにでかでかと巨大なステンドガラスが張られ主張しています。正面には入口があります。
虫の声もなく、不気味な静けさだけがあります。
⇒正面入り口について
細かい装飾が施されています。
ドアにカギは掛かっておらず、入ろうとすれば簡単に開けることができます。
10.2 教会1階
長椅子が整列して並べられ、奥に教壇があることから礼拝堂だとわかります。教壇の上には立派な燭台があり、先にはゆらゆらと火が灯された蝋燭が置いてあります。
蝋燭の明かりが教壇の両脇を照らし、両端に階段があることがわかります。
10.3 教会2階
2階に上がると4つのドアがあるのが分かります。ドアにはそれぞれ「用具室」「人形部屋」「食堂」「教祖の部屋」と書かれたプレートが張られています。
10.3.1 人形部屋
中に入ると真っ暗な部屋が広がっており、そこかしろから息遣いが聞こえます。
いくつか窓があるようですが、板のようなものが打ちつけられており、良く見えません。
⇒辺りを照らす。
周りには祭服を着た男と女が何十人と座り込んでいるのに気が付きます。彼らは探索者をじっと見つめます。
(彼らは探索者を見るだけで特に何かをしてきません。)
⇒【目星】や見知った人間がいないか調べる
昼間出会った青果物店の店主、飲食店の歳のいった女性と男性がいます。しかし服装は昼間と異なり祭服を着ています。
⇒見知った顔に話しかける
何も反応を示しません。探索者をじっと見つめます。
10.3.2 用具室
鍵が掛かっており、開けることができません。
⇒【鍵開け】か飲食店裏の死体から見つけたカギを使う
ガチャっと音がし、鍵が開いたようです。
⇒中に入る場合
中に入ると真っ暗で、埃とカビ臭さを感じます。
いくつか窓があり、そこから入る月明かりがぼんやりと中の様子を照らします。
椅子や机のような影が見えることから、物置き部屋のようです。
⇒辺りを照らす。
置いてあるものは教会に関係する物が乱雑に置いてあります。この教会の備品置場のようだとわかります。
教会の備品でありそうな物なら探せばあるかもしれません。
⇒探索者が希望する物を探す。
KP判断で教会の備品でありそうな物なら【幸運】で判定し、成功したら見つけられます。
10.3.3 食堂
中に入ると真っ暗で、いくつか窓があり、そこから入る月明かりがぼんやりと中の様子を照らします。
奥の方に月明かりを反射するものがいくつかあり、調理器具であるように感じます。
⇒辺りを照らす。
部屋が区切られているのに気が付きます。
手前にはテーブルと椅子が並べられ、食卓となっており、奥は調理場となっています。
⇒調理場を探す。
【幸運】で判定します。成功した場合は一際大きな包丁である肉切り包丁を見つけます。
成功しても失敗しても、一般的な調理器具、食器、大型の冷蔵庫が見つかります。
⇒大型冷蔵庫の中を調べる。
食材がすし詰め状態で入っており、食糧には当分困らなそうです。
野菜や飲み物が入っており、特段目を引くものとしては布を巻いて保存されている何かがあります。
⇒布を解いた場合
人と思われる腿から足の先までの肉が右足と左足の2本分入っています。
人体の一部を発見し、この足をどうするつもりだったのか想像してしまった探索者はSANチェック(0/1D3)
10.3.4 教祖の部屋
部屋に入ると机、本棚が置いてあり、奥に3階へと続く階段が見えます。
⇒本棚を調べる
本棚には「あ~お」、「か~こ」というように五十音が書かれた厚めのファイルが見つかります。
⇒【図書館】や「く」を含むページを調べる。
「く」のページに差し掛かり、ペラペラと捲ると「黒山殊音」と書かれたページが見つかり、そこには黒山殊音のプロファイルが記載されている。
プロファイルの端には赤字で「済」と書かれている。
⇒【図書館】や「よ」を含むページを調べる。(図書館成功なら「よ」の情報に加えて得る)
「よ」のページに差し掛かり、ペラペラと捲ると「四十八坂芒」と書かれたページが見つかり、そこには四十八坂芒のプロファイルが記載されている。
⇒プロファイルの端を確認する。
プロファイルの他に特に目を引くものはありません。
⇒机を調べる
机の引き出しを開けるとノートが入っています。
⇒ノートを読む
教祖が書いたと思われる手記が見つかります。
『――あの非日常が恋しい。かつて私を彷彿とさせたあの経験は日常をとてもつまらないものに変えてしまった。私はまたあのような経験ができないだろうかと期待を込めてあの場所へ向かうことにした。
――あの場所はあの厄災の終わりを最後に、時を止めて私を待っていた。
あの場所へ入ると、あの体験を思い出した私の身体は自然と体を強張らせ、背筋を凍らせる。ああ、この緊張感、危機感、恐怖心が私を高揚とさせる。最高に気持ちが良い。
しばらく感傷に浸った私は要所を探ってみることにした。すると、当時は見つからなかったが、書庫の裏に隠し部屋があることに気が付いた。
部屋に入ると木製の机があり、その上には羊皮紙で作られた一冊の本が置いてあった。私はすぐに”本物”だと直感した。日常に飽き飽きしていた私はその本が魅力的で、釘付けになった。
私はその本を持ち帰って最後まで読み通すことにした。
――本がボロボロになるまで読み漁った。本を読破するのに半年掛かった。半年も非日常に身を投じられた。
この本はやはり魔道書のひとつで、中には無機質から生物を作る為の秘儀について記載されていた。
私は次なる非日常を求め、その秘儀を執り行うことに決めた。
人が寄り付かないあの場所、魔道書のあった部屋を使わせてもらうことにした。
――生物を生成する為の素材を集めるのは意外と大がかりだったが、しかしそれも一興。興奮していた私はすぐに儀式を執り行った。
儀式は一朝一夜では終わらず、丸3日掛かった。冒涜的な呪文を唱え続け、更に時折魔法陣に加筆や変更が必要でとてつもない労力を要した。
全ての儀式を終えると、閃光と轟音が鳴り、魔法陣の中心には私と同じ顔をした男が完成していた。
ところが、その私と同じ顔をした男は寝たまま動かない。しかし呼吸や心拍音もあり、生物としては完成しているようだ。この男は身体を動かそうとせず、唯そこで生きているだけの失敗作だった。
この儀式にはまだ不十分なところがあるのだと理解した。例えるなら生命という漢字のうち”生”は作ったが”命”が足りていないという状態。
この失敗作は処分することにした。魔道書によると逆の手順で元の無機質にまで戻せるらしい。
――あれから4年経った。私は命を如何にして作るか考え続けたが思いつかなかった。
上手く事が進まないことに苛立ち、休憩がてら外の空気を吸おうとあの場所から出ると、その日は満月で特別綺麗だと感じる夜だった。私は軽い気持ちで、この満月の元で再び儀式を執り行うことにした。
かつては3日間を要した儀式もかなり簡略化に成功し、1時間で済むようになっていた。
更に無機物である必要もないことが分かった。いつも通り失敗作を素材として使うことにした。
儀式を終えると、いつも通り寝たままの私と同じ顔をした男が完成した。
「もし君が生命として完成していたら2人でこの月を共有しようと思っていたのに残念だ。」
そう呟くと、その男は立ち上がり、月を眺め始めた。
私は彼に命令が行えるようになっていることに気が付いた。
その後も試行錯誤を続けた結果、何故かは分からないが満月の下で儀式を行うことが関係していることが分かった。
――私は思い切って満月を取り入れられる、この儀式の為だけの教会を建てた。
あの場所を離れ、日常を非日常で蝕む為に街中に作った。
全ては非日常で私を覆い尽くす為に。退屈な世の中を非日常で埋め尽くす為に。
まずはこの町の住民を私の人形達と入れ替えてみようと思う。
――思いも掛けず、逃げた人形がある人物となり替わっているようだ。私の計画の第一歩として優秀な人形にはそのまま入れ替わってもらうとしよう。』
まとめると3つのことが記載されている。
「教祖は日常を嫌っている」、「儀式に必要な時間は1時間」、「儀式に必要な材料は人でも可能」。
10.4 教会3階
部屋の正面の壁が大きなステンドグラスになっており、そこから月明かりが部屋いっぱいに差し込んでいます。
月明かりはステンドグラスを通して幻想的な色をフロア全体に広げ、まるで星空に立っているような錯覚を受けます。
部屋の中央には豪勢な祭服を着た男がおり、一目で教祖であるとわかります。
その傍らには祭服を着た人物がx人(探索者と同じ人数+1人の数)おり、部屋の奥を見ています。
視線の先には巨大な魔法陣が青白い光を放っており、その中央に黒山殊音が倒れています。動く気配がなく、気を失っているようです。
教祖は何かをぶつぶつと呟いていましたが、三階へ上ってきた探索者たちに気が付き、中断して話しかけてきます。
教祖「やっと来たのか、大分時間が掛かったじゃないか、待っていたよ。昼間コイツと会ったそうだね。君について教えて貰ったよ。」
そういうと傍らの祭服の男の肩を叩きます。
教祖「下で、私の手記を読んだんだろう?わざと読ませるように仕込んだんだ。どうだった?ワクワクしなかったか?私と一緒にこの退屈な日常をぶち壊さないか?」
⇒賛成する
教祖「そうか!君は分かってくれて嬉しいよ!日常をぶち壊す為にはまず君の身体から変えていかなくてはならないな。そんな日常に塗れた身体で私と対等などありえない。信用の証にその身体を差し出して貰おうか。抵抗すれば、それは反対と受け取るよ。」
そういうと傍らに立っていた祭服の男は探索者の方に歩み寄って行きます。
次章「教会戦闘」へ続きます。
⇒反対する(手記を読んでいない)
教祖「黒山殊音も君もダメだ。これが理解できないなんて、忌むべき日常にすっかり侵されている可哀想な存在だ。私の人形で君の可哀想な人生を代替わりしてあげよう。」
そういうと傍らに立っていた祭服の男の顔がぐにゃぐにゃと目、鼻、口が流動し、あっという間に顔が顔とは認識できなくなります。まるで顔のパーツが散らかったような頭になると、今度は少しずつパズルのように目が作られ、次は口が作られ、鼻が作られます。出来上がったその顔は探索者と全く同じ顔になっています。
⇒初めて原ショゴスの変身を見た場合
生物という枠組みを超えた、あまりに現実離れした光景を目の当たりにした探索者はSANチェック(1/1D10)
⇒既に原ショゴスの変身を見たことがある場合
自分と全く同じ顔の人物と出会った事に対して強い不快感を感じSANチェック(0/1)
探索者の顔をした祭服の男は探索者へと歩み寄って行きます。
次章「教会戦闘」へ続きます。
11 教会戦闘
教祖「まずはこの黒山殊音を可哀想な日常から解放してあげなくては。あと少々で儀式は完了する。」
教祖は巨大な魔法陣の方へ振り向き、何かぶつぶつと呪文を唱えると青白い光が活性化します。
祭服の男は自分が成り変わった探索者の前にそれぞれ立ちはだかり、優先的に狙いをつけている様子です。
教祖は詠唱に集中していて後ろを向いていますが、教祖と同じ祭服の男が守るように傍で構えています。
教祖は背を向けて詠唱に集中している様子が見えます。
⇒手記を見ていた場合
探索者が来るまでの間も詠唱を行っていたのか、あまり時間がないと感じます。
教祖を行動不能にできれば詠唱が止まり、黒山殊音を救出することができます。
ただし、教祖は祭服の男に守られ、行く手をふさがれている為、先に祭服の男をどうにかする必要があります。
戦闘開始。
《KP向け》
<詠唱が完了するまでの時間>
1ラウンド30秒とし、残りゲーム内時間で計算します。
※随分ゆっくりしない限り、戦闘中に詠唱が完了することはありません。時々、「戦闘が始まってから〇分経過しています」と囃し立てると緊張感が生まれて良い。
<立ち位置のイメージ>
探索者 偽探索者 偽教祖 教祖 黒山殊音
<教祖姿の祭服の男について>
攻撃には参加せず、教祖の代わりに受け流しや身代わりに庇って時間を稼ぎます。
<祭服の男を無視して、教祖の元へ辿り着く方法の例>
祭服の男を倒さずに教祖の元に辿り着くには生存する祭服の男のDEX値と探索者のDEX値でDEX対抗し、
成功した場合は祭服の男の隙を突いたとして、そのまま教祖に攻撃を与えるチャンスが得られます。
失敗した場合は祭服の男の隙を狙えず、教祖に攻撃することができません。
⇒教祖の詠唱が完了した(余りにも時間が経ちすぎた)場合
教祖は詠唱を終えると、魔法陣の青白い光が中心へと収束し、黒山殊音の身体を包み込みます。
けたたましい音を発すると光は波打ちながら四方へと消えていきます。
中央には黒山殊音が横たわったままのようです。
教祖「次は君の番だよ。」
教祖は探索者が倒れるのを、手を出さずに観戦しています。
(教祖は原ショゴスに「そこだ!やれ!」等と声を掛けたり、探索者に「君は可哀想な人だ」と声を掛けたりして観戦を決め込みます。教祖だけが残った場合も倒れた原ショゴスに対して「起きて早く助けろ」等と声を発するだけで戦いません。)
⇒教祖にダメージ(1ダメージでも)与えた場合
教祖は後ろからの唐突な攻撃を受けると「ぎゃああああああ!!」と悲鳴をあげ、そのままばたりと気絶します。
12 エンディング
12.1 教会に黄色いコートの女性を引き渡して終えた(バッドエンド)
殊音「私にそっくりの人が本当に居ただなんて。これからはもう身に覚えのないことで悩まされる心配もないんですね、やっと日常を迎えられます。」
黒山殊音は寝室へ一度入って戻ってくると、札束を手に持って戻ってきます。
黒山殊音「ありがとうございました。相談料をお支払いしますね。」
⇒もしタンス預金に手を付けて居れば、黒山殊音の<アイディア>で成功した場合
枚数が足りないような気がします。
探索者は礼を貰うと、それぞれの家へ帰っていきます。
⇒青果物店で祭服の男に見られた探索者のうち代表して一人の後日談
黒山殊音の奇妙な相談を解決して数日か経ち、非日常から帰ってきた探索者は日常のありがたみを噛みしめながら家で休みを謳歌しています。
すると突然家の呼び鈴がなり、返事をして出ると警察官が顔を出します。警察官は貴方の顔を見ると上着の内ポケットから一枚の写真と一枚の紙切れを取り出し、あなたの方へと向けます。
写真には数日前に見たことのある祭服を着た人物が写っています。しかし、その人物の顔は最もよく知る人物の顔、探索者自身の顔です。自分と同じ顔の人物はまるで赤いペンキを頭から被ったかのように全身に赤色を帯び、その手には赤色が滴る刃物、後ろには黒山殊音らしき人物が赤い海に倒れています。
紙切れには逮捕状と書かれ、下に探索者の名前が記載されています。
警察官「貴方で間違いありませんね。貴方を殺人の容疑で逮捕します――。」
⇒他に探索者が青果物店で祭服の男に見られていた場合
同時刻、日常のありがたみを感じながら過ごしていた別の探索者はたまたま用事があって外を歩いていると、逮捕状を見せられた探索者が現れ、片腕を背中に回しながら近寄ってきます。
逮捕状を見せられた探索者「探したよ――。」
※ドッペルゲンガーが探索者に成り済ましている。
(この後、逮捕状を見せられた探索者、その偽物に出会った探索者がどうなったかは、探索者の想像に任せます。)
12.2 教会戦闘で全滅した(デッドエンド)
探索者は目が覚めると教会のとある部屋に居ることに気が付きます。身体中に痛みはなく、受けた傷もなくなっていることに気が付きます。すぐ傍を見ると黒山殊音が虚ろな目をして座っています。
しかし探索者は黒山殊音を見ても何も思いません。
コツ…コツ…と足音が聞こえ、ギギィ…と軋む音とともに扉が開き、教祖が入ってきます。
教祖は探索者の前に歩いてくると、一枚の写真を見せながら話しかけてきます。
教祖「やっと目が覚めたようだね。さて、君の最初の仕事だ。こいつを殺して、入れ替わってくるんだよ。」
探索者はその言葉に何の疑問を持つことはありません。
探索者はドアを開け、外へ向かって歩き出しました――。
(探索者はロストします。)
12.3 教会戦闘で教祖を倒した(ノーマルorトゥルーエンド)
黒山殊音の元へ行き、声を掛けると目を覚まします。
すると階段から祭服を着た男女が10人…20人と登ってくると探索者と教祖をあっという間に囲みました。
教祖はしぶとく意識を取り戻すと彼らに言い放ちます。
教祖「ヒヒ…私も悪運が強いみたいだ。良いか、可哀想な君にも分かるように説明してやる。
この教会はたった一人の人間である私によって創られ、残りは全て私が儀式で作った人形達だ!つまりここに揃った人形は私の味方だ!
さあこいつらを殺せ!!私を守れ!!」
祭服を着た彼らはまるで聞こえていないかのように反応がなく、ただ探索者と教祖を見続けるだけで、襲う様子もなければ庇う様子も見られません。
教祖「お前らは俺の言う事を聞く人形だろ!?言う事の聞けない使えない人形は全部無機質のクズに戻すぞ!」
彼らを掻き分け、黄色いコートの女性が現れます。
黄色いコートの女性「貴方がほんの僅か気を失っている間に、彼らの主導権を私が奪いました。」
教祖「お前は何を言っている!?」
黄色いコートの女性「私は一生懸命、知恵を絞って考えました。考えた結果をみんなに話しました。」
そういうと囲っていた祭服の男のうち2人が教祖の元へ歩み、両手両足を掴み、彼らが築いている人の壁の向こうへと運んでいきます。
姿が見えなくなると教祖の叫ぶ声が部屋中に響きわたります。
教祖「おい、やめろ、やめろおおお!!人形のくせに!!こんな事していいと思っているのかあああ!!!」
その声はすぐに終わりを迎え、静かになると探索者たちを囲っていた祭服の男女らはその場から散り散りになり、階段の下へと消えて行きます。
そこには黄色いコートの女性だけが残り、探索者に話しかけます。
黄色いコートの女性「探索者のお陰で、私達は自由を得ることができました。
これから私は彼らを引き連れて人々の眼の届かないところへ連れて行こうと思います。
行く宛はあります。教祖の言っていたあの場所ってところに行ってみようと思っています。そこなら誰も居ないらしいので。
彼らは良し悪しを考えることも感情も何もありません。無垢な心のまま、その身体が安らかに朽ちていくのをそこで見守ろうと思います。」
⇒黒山殊音が儀式の犠牲になった場合
「黒山殊音が儀式の犠牲になった」へ進む
⇒黒山殊音が儀式の犠牲になっていない場合
「黒山殊音が無事」へ進む
12.3.1 黒山殊音が儀式の犠牲になった(ノーマルエンド)
黄色いコートの女性は黒山殊音を見ると抱え上げ、探索者の方を向きます。
黄色いコートの女性「…黒山殊音さんは、私たちと同じになってしまった。私が彼ら同様に連れて行きます。
黒山琴音さんの命運を探索者さんだけに託してしまってごめんなさい。
探索者さんのことは忘れません。」
黄色いコートの女性が階段の下へ降りて行くとそのまま姿を見失います。
教会を出ると虫の声が探索者の耳を刺激し、日常への帰還を歓迎します。
しかし、黒山殊音を失った事実は貴方の日常に非日常を確かに刻み込むでしょう。
その非日常が心を蝕み、いつか戻ってくることを教会という無機質の静物(せいぶつ)は待ち望んでいるかもしれません。
12.3.2 黒山殊音が無事(トゥルーエンド)
黒山殊音「まるで、禁断の果実を食べることなく、楽園で平和に過ごすアダムとイブの様な一生を彼らは迎えるのでしょうね…。貴女は一人だけで辛くないの?」
黄色いコートの女性「それでも彼らは同じ仲間ですから。」
少し考えた様子を見せると、
黄色いコートの女性「いえ、もし辛くなったら、禁断の果実をいただきに行きますね。あれは、貴方と探索者、良い人と会ったことを思い出す味ですから。」
黒山殊音「その時は好きなだけ持って行っていいからね!」
黄色いコートの女性「ありがとうございます。では、探索者さん、黒山殊音さん、貴方達のことは忘れません。」
黄色いコートの女性が階段の下へ降りて行くとそのまま姿を見失います。
黒山殊音「私たちも帰りましょう」
教会を出ると、虫の声が探索者達の耳を刺激し、日常への帰還を歓迎します。
黒山殊音「私は知恵があって良かったなって思うな。こうして話して楽しめるしね。帰ったらリンゴパーティでもしましょう!」
その晩、禁断の果実をたっぷり食べた黒山殊音と探索者はお腹の贅肉という形で罪を被ったのでした。
13 クリアボーナス
黒山殊音に黙って、黒山殊音の持ち物を持ち去った。(黒山殊音の好感度 -1×持ち去った数。※万札は1枚につき1個として換算)
黒山殊音の好感度を+1以上にした。(SAN回復 1D2)
シナリオをバッドエンドでクリアした(SAN回復 1D2)
シナリオをノーマルエンドでクリアした(SAN回復 1D4)
シナリオをトゥルーエンドでクリアした(SAN回復 1D6)
戦闘で祭服の男を倒した。(<クトゥルフ神話>+倒した人数分)
教祖を倒した。(SAN回復1D6)
黒山殊音が無事に生存している。(SAN回復 1D10)
ペアチケット旅行券を使う場合(SAN回復 1D2)※他キャラへ譲渡可
14 補足
14.1 黒山殊音に対し【心理学】を使うことについて
今の殊音は家から出られなくなる程町の人間に責め立てられ、疑われることに敏感になってしまっています。その為、疑われたことにすぐに気が付いてしまいます。たとえ心理学を行った相手の表情が見えなくても空気から察してしまいます。読めなくても良い空気が読める女です。
殊音に対して【心理学】を行う度に好感度が1D2下がっていきます。
同時に多人数から【心理学】を行われた場合はその心理学を行った人数分1D2下がっていきます。(例:3人から同時に心理学を行われた場合3D2下がる。)
14.2 原ショゴスについて
このシナリオ内での原ショゴスは人体錬成のような扱いになっています。
旧支配者が無機質から生命体を作ったものをショゴスと呼ぶように、今回も無機質から人間を作ったという意味で原ショゴスとして扱いました。
イメージしづらい方は某錬金術師の人体錬成で作られたホムンクルスを原ショゴスと呼んでいると思ってください。
14.3 黄色いコートの女性について
黄色いコートの女性は元々教会の清掃を任されていました。3階を清掃しにきた際に、仲間が無機質にされる様子を見てしまいます。それによって強い恐怖心が生まれ、教会から逃げ出し、黒山殊音と出会います。
教会から隠れ、逃げ回っている間に偶然黒山殊音が庭に植えているリンゴを食べますが、それによって果たして知恵が付いたかは言及しません。
何故自我を持つことができたのかについて、儀式に満月の明かりが必要であることが分かったものの、その真相は究明できていません。未だ解明しきれていない儀式に更に条件があったのか。同じように何かの条件が重なり、自我を持つことができる個体が作られます。
この時の教祖は既に人間を作ることに興味はなく、日常を非日常で満たすことを目的としています。その第一歩は“町民を自分の作った人形と入れ替えること”です。その目的を達成するためには、自分の命令した通りに人形は動かなくてはなりません。人間の様に自立する生物ではなく、飽くまで自分の命令に忠実であることに重視していました。その為、教祖は自我を持った人形を定期的に無機質に戻す儀式をしています。
この教祖が途中で投げ出さなければ全容が解明できていたかもしれません。
彼女が作られた日、偶然かアルデバラン星の星食が観測されていました。
14.4 儀式について
儀式には1時間は掛かる程長い冒涜的な詠唱を唱える必要があります。
注意して欲しいのは、詠唱している間徐々に進行するタイプではなく、1時間唱え続けて詠唱が完了したら呪文としての力を持ち発動するタイプということです。その為、儀式の詠唱途中に助けることができれば無傷のまま救出できます。
黒山殊音に行われたのは、人体という素体を元に原ショゴスを作る行為です。その為、見た目は変わりませんが、中身は原ショゴスとなってしまいます。
14.5 教祖の部屋の本棚にあるファイルについて
町民と原ショゴスを丸ごと入れ替えようというのが教祖の目的です。その為、少しずつ町民と同じ顔の原ショゴスを生成しています。
プロファイルに記載されていた「済」というのは、その人物と同じ顔の原ショゴスを用意したという意味です。
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黒山殊音家戦闘、流石に勝った場合を書いてくれないかぁ……?
so-ctwさん
コメントありがとうございますっス!
勝った場合については『8.1 黄色いコートの女性を黒山殊音の元へ連れていった場合』の最後で『黄色いコートの女性「私と勘違いされて…教会に攫われた……?教会…怖い…行きたくない…。」』とあるので、探索者は教会に向かおうとしてくれると思うっス
もし、勝ったけどどうしよう…と探索者が迷うようであれば、黄色いコートの女性を使って教会に誘導して頂ければ円滑に進むようになると思うっス!
そうしたら次の『10 夜の教会』へ進んでくださいっス
補足として、『9 黒山殊音家戦闘』にて『⇒探索者が負けた場合』のみ記載したのは戦闘で負けた場合の救済措置として用意したものになりますっス