十五夜の引力

クトゥルフ神話TRPGオリジナルシナリオっス!

クトゥルフ神話TRPG第6版で十五夜シナリオをどうしても作っておきたくって出来立てホヤホヤのものを乗せた次第っス!
(ですます調も統一していないしで少々読みずらいとは思うっス…。時間があれば修正するとは思うっス)

推奨人数:1人
プレイ時間:ボイセ3時間
時代背景:現代日本
KP難易度:★★★☆☆
PL難易度:★★★☆☆
システム:クローズド
その他:RPメインとなるのでキーパーはプレイヤーのやりたい行動を積極的に取り入れるようにすると良い。

 

1.   はじめに

このシナリオはクトゥルフ神話TRPG第6版に対応している。プレイヤーは1人、プレイ時間は探索者を作成するための時間を除き、3時間程度を想定している。

シナリオの舞台設定は現代日本、季節は秋で月見の十五夜(旧暦8月15日)に合わせた舞台設定となっている。場所はキーパーが自由に決定して良い。

探索者は喧騒を離れた良く澄んだ夜空が望める田舎町で中秋の名月を楽しもうと優雅な休暇を取りに向かうところから始まる。

 

2.    シナリオの背景

鏡のように綺麗な池を持つ田舎町の祝初施設にいる少女に目を付けたゴグ=フール(マレウスモンストロルムP.171)は少女の正気を失わせようと悪夢を見せる。

ゴグ=フールが見せる悪夢によって、少女は自身の出自に不安を駆り立てられる。その悪夢によって少女は自身の出自が月の民の貴族であり、月を支配しようとする族によって地球に堕とされ、お爺さんとお婆さんは月へ帰さないようにするために監視役を担っている。本当の両親は月に取り残され、少女は月へ帰り争いを止める使命を持っていると思ってしまう。

夢をお告げのように捉えた少女はお爺さんとお婆さんに相談することもできず自分の中に留めていると不安が募っていく。ストレスから段々と正常な判断ができなくなっていき、夢と現実の区別が付かなくなっていく。少女の狂気を大切に育て、十五夜に狂気で満ちた少女を食らおうとゴグ=フールは機を伺っている。

探索者の眠った十五夜の深夜の客室はヒプノス(マレウスモンストロルムP.240)の夢の領域に入り込んでしまう。

ヒプノスが見せる夢とゴグ=フールが見せる悪夢が混線してしまう。

 

3.    シナリオの概要

十五夜の日に探索者は休暇を取るために選んでいた宿泊先の家にお邪魔することになった。宿泊先の家にはお爺さんとお婆さんが歓迎してくれる。その旅館には他に寝たきりの娘がいることを知る。

夜になると宿泊先では十五夜にちなんで娘が寝ている部屋に月見団子、すすき、里芋などのお供え物、広い皿に酒を注いで飾る。お皿に注がれた酒には明るい月が反射している。探索者へも折角来て頂いたのだからと両親から広いお皿に酒を注いでもてなしてくれる。そうしておもてなしを受けた探索者は眠ってしまう。その時、少女は「月に帰らないと…」と寝言を言う。

眠った探索者の体は揺すられて起こされる。そこにいたのは眠っていたはずの少女だった。起き上がると何故か天井に張り付いた状態で眠っていることに気が付く。そして少女も同じように天井に座っているような状態で揺すっていた。探索者が起きたこの世界では地球の重力ではなく月の重力に引っ張られており、この天井がなければ月まで落下することになる。

少女はゴグ=フール(マレウスモンストロルムP.171)によって悪夢に苛まれている。探索者はヒプノス(マレウスモンストロルムP.240)によって夢の世界に連れていかれる。二人の夢は共有され、探索者は不幸にも少女の見ている悪夢に巻き込まれた形になる。

探索者はヒプノスの理想を実現する力によってゴグ=フールによる悪夢から少女を守ることができる。

夢から覚めた後の状況は少女の状態によって変わる。

少女が悪夢によって正気を失っている場合、少女はゴグ=フールの餌食になる。その様子を探索者は目撃することになる。

少女の正気を保った場合はゴグ=フールの餌食になることはなかったものの、ヒプノスによって夢の世界に捕らわれてしまう。探索者は少女の体が穏やかに最期を迎えていることに気が付くことだろう。

探索者の行動によって少女が現実の世界でやりたいことが見つかれば目を覚ますことだろう。
例えば探索者に惹かれた状態で求婚を申し込まれたら探索者と共に生きることを選ぶかもしれない。

 

4.    探索者の作成

探索者は自由に作成して良い。

十五夜の日に田舎町の鏡寝荘(かがみねそう)という月見に最適な庭を持つ宿泊施設に泊まる予定。

5.    主なNPC

鏡寝 輝夜(17歳) ゴグ=フールの犠牲者

【年齢は様々な輝夜姫の所説から17歳と指定した。探索者が感情移入しやすい年齢に変更すると良いだろう。】

鏡寝荘でお爺さんとお婆さんの手伝いを積極的にするような健気で優しい子。自身の両親を知らない。

ゴグ=フールが見せる悪夢によって、自身の出自に不安を駆り立てられる。その悪夢によって少女は自身の出自が月の民の貴族であり、月を支配しようとする族によって地球に堕とされ、地球のお父さんとお母さん【お爺さんとお婆さんのこと】は月へ帰さないようにするために監視役を担っている。本当の両親は月に取り残され、少女は月へ帰り争いを止める使命を持っていると思っている。不安によって幻覚のような症状を発症しており、ありもしないことが当然のことのように確信を持ってしまう。

STR:9 CON:10 SIZ:14 INT:14 POW:8 DEX:8 APP:17 EDU:10

正気度:20 耐久力:12 マジック・ポイント:8

ダメージボーナス:+0

技能:芸術(挨拶) 60%、製作(日本料理) 50%、経理 50%、説得 40%、値切り 40%、隠れる 55%、図書館 50%、歴史 50%、天文学 41%

 

悪夢の中のお爺さん 鏡寝 富(53歳)

レンの男(マレウスモンストロルムP.119)。

STR:10 CON:12 SIZ:8 INT:17 POW:7 DEX:8 APP:6 EDU:該当なし

耐久力:10 マジック・ポイント:7

ダメージボーナス:+0

武器:槍 25% ダメージ1D8+1、むち 20% ダメージ1D3もしくは<組み付き>、ナイフ 25% ダメージ1D4+db、棍棒 20% ダメージ1D8+db

技能:登攀 40%、回避 DEX×2%、跳躍 35%

正気度喪失:体の奇形が隠れている場合は正気度ポイントの喪失はない。両側面の髪の中から小さな角が生えており、足袋に包まれた足は山羊のヒヅメのような形をしていることに気が付きます。一見人の姿に見えるお爺さんが亜人間であることを知り、正気度ロール(0/1D5)を行う。

 

悪夢の中の婆さん 鏡寝 歩(53歳)

悪夢の中のお爺さん 鏡寝 富と同じステータス。

 

悪夢の中の若い客達

基本的に悪夢の中のお爺さん 鏡寝 富と同じステータス。【任意で変更しても良い。】

STR:13 CON:15 SIZ:13 INT:13 POW:9 DEX:11 APP:10 EDU:該当なし

耐久力:14 マジック・ポイント:9

ダメージボーナス:+1D4

 

悪夢の中の怪物

ムーン=ビースト(基本ルールブックP.192)。

STR:19 CON:14 SIZ:20 INT:20 POW:13 DEX:9 APP:なし EDU:なし

耐久力:10 マジック・ポイント:7

ダメージボーナス:+0

武器:【本シナリオオリジナル】毒槍 25% ダメージ1D10+1+db+感染の可能性

感染:【本シナリオオリジナル】CON×5で感染の有無を判定。失敗した場合は感染し発熱等の症状が発生する。1D2のCON減少、1D2の最大耐久値減少(最大耐久値が耐久値より下回る場合は耐久値も減少)する。重複はしない。

装甲:火器の攻撃は可能な最低限の耐久値しか失わない。

正気度喪失:目撃した場合、正気度ロール(0/1D8)を行う。

 

悪夢の中の鼠

ネズミ怪物(マレウスモンストロルムP.90)。

STR:1 CON:7 SIZ:1 INT:11 POW:9 DEX:17 APP:なし EDU:なし

耐久力:4 マジック・ポイント:なし

ダメージボーナス:-1D6

武器:噛みつき 35% ダメージ1D3+感染の可能性

感染:【本シナリオオリジナル】CON×5で感染の有無を判定。失敗した場合は感染し発熱等の症状が発生する。1D2のCON減少、1D2の最大耐久値減少(最大耐久値が耐久値より下回る場合は耐久値も減少)する。重複はしない。

装甲:ネズミ怪物を攻撃する場合は命中率から40%差し引く。誰かに取りついている場合は20%差し引く。

正気度喪失:目撃した場合、正気度ロール(0/1D6)を行う。

6.    マップ

 

7.    アイテム

【以下のアイテムについて】ヒプノスによって作られた現実には存在しないアイテムのため持ち帰ることはできない。アイテムを手に持つと同時にそのアイテムで何ができるかが探索者と少女は理解できる。本来の呪文と同じマジック・ポイントや正気度をアイテムに注ぐことで効果が発動する。少女に限り、正気度が底を尽きた場合も消費し続けることが可能(シナリオ上、探索者が正気度を使い切ったら何もできなくなってしまうことを防ぐため)。呪文の発動までにかかる詠唱はアイテム自体に備わっていると扱い、呪文を掛けるまでのラウンドはなしで即時に使える。

【以下のアイテムの取得方法について】取得方法は基本的にプレイヤーに委ねる。探索者が起こす行動であれば夢の世界ということで凡そ理想通りいくことだろう。ただし、無理なお願いであればヒプノス自身が探索者に気付いて容赦なくその容姿を無機物に変えてしまい、夢の世界に永住することになるだろう。もし少女が取得方法に介入するのであればゴグ=フールの悪夢によって邪魔が入るかもしれない。

蓬莱の玉の枝

根が銀、茎が金、実が真珠の枝。無限の財を与える。底なしのマジック・ポイントが宿っている。

これを持っていると≪杖に魔力を付与する≫(基本ルールブックP.285)が使えるようになる。蓬莱の玉の枝に内包されているマジック・ポイントは無限。

火鼠の裘(かわぎぬ)

燃え尽きることのない鼠の皮。炎を纏うことができる。

これを身に纏うと≪炎の外套≫(基本ルールブックP.284)が使えるようになる。

仏の御石の鉢

釈迦が重用した黒い鉢。言葉の通じる相手を諭すことができる。

手に持っていると≪忠告の注入≫(基本ルールブックP.272)が使える。

龍の首の珠

龍の口の中(首に当たる位置)にある宝玉。怪我や病気を治癒する。

手に持っていると≪治癒≫(基本ルールブックP.272)が使えるようになる。

燕の産んだ子安貝

ツバメの巣の中にある子安貝。安産、子孫繁栄に対する強い想いが込められている。

手に持っていると≪被害をそらす≫(基本ルールブックP.278)が使えるようになる。

8.    導入

世間ではすっかり月見(旧歴8月15日)シーズンの商品の宣伝が目立ち、今日は満月になる十五夜の日を迎えていた。探索者は一泊二日で田舎町にきており、今回の宿泊先である鏡寝荘(かがみねそう)には広い日本庭園と池があり、十五夜に縁側から庭を見てみると庭園の草花と夜空の月が池に映りこみ、鏡花水月とはまさにこの景色を表現するためにあるのだと思わせるような最高のロケーションで中秋の名月を鑑賞することができ、楽しみにきている。

宿泊先に辿り着くとロビーに仏様の絵が描かれた立派な水墨画の掛け軸が飾られてあるのが目に入る。そしてお爺さんとお婆さんが出迎えてくれる。お爺さんは探索者の荷物を受け取るとぷるぷると腕を振るわせながら持ち、お婆さんは「こちらへどうぞ」と言い、よぼよぼと探索者の前を歩きます。【若い人が居ないのかと聞かれると娘がいるが一週間前から寝たきりになっていることを教える。】

案内する途中の部屋の前でお婆さんは「少々ここでお待ちください。」と言います。お婆さんは襖を開けると暗闇に向かって「輝夜、お客さんが来ましたよ。」と声をかけます。暗闇の中には布団を被って誰かが寝ている影が見えます。再び襖を占めると探索者に「お待たせしました。お客様のお部屋はこちらになります。」と隣の部屋の襖を開ける。部屋に入ると噂の庭が望める縁側のついた部屋だということが分かる。縁側と庭は隣とも繋がっている。

【暫く自由に探索する時間を取っても良い。】

お爺さんとお婆さんが襖をとんとんと叩く。一升瓶に入ったお酒と大きな盃、お餅の積みあがった三宝を持っており、探索者に話しかける。「十五夜ということで持て成したいと思うのですが、一つ我儘を聞いてはくれませんか?実は一週間前から寝たきりの娘が隣の部屋におりまして、楽しんでいる声を聞かせてあげたいのです。もしかしたら声を聴いて目を覚ますかもしれませんので、一つ人助けだと思ってよろしければ娘の居る部屋で月見を楽しんではくれませんか?」

【了承する場合は以下を描写。了承しないのであれば読み替える】隣の部屋に入ると布団を被った顔立ちの良い少女が眠っており、容姿は中学生頃のようで、長く艶のある黒髪に鮮やかな色合いの和服が重ね着されている。「折角のお月見ですから綺麗に飾ってあげたいと思いましてね。」とお婆さんが着物を着ている理由を説明します。

お爺さんとお婆さんは部屋に月見団子、すすき、里芋などのお供え物に大きな盃にお酒を注いで飾ります。

お婆さんは探索者にも大きな盃を渡し、お酒を注ぐとそこには夜空の黄色くて真円の月が映りこみます。隣ではお爺さんが弦楽器を持ち出して演奏をしてみせます。

探索者が月見を楽しんでいると少女が「月に帰らないと…」という寝言を耳にする。

持て成された探索者は気持ちよく酔って眠ってしまう。

・【医者の見解について聞いた場合】「これと言って身体に異常は見られないとのことで、栄養剤の点滴をしに定期的に訪問して頂いています。」と話します。

 

9.    目覚め(客間)

【ここから先は悪夢の中の世界になり、現実とは全く無関係の世界になります。正気度ロールは少女にも適応します。】

持て成されて眠っていた探索者の体を誰かが揺すり「お客様、起きてください。」という女性の声が聞こえます。目を覚ました探索者は眠っていたはずの少女(輝夜)が探索者に声を掛け揺すっていたことが分かる。起き上がってみると、眠っていたはずの客室の床が天井にあることが分かる。部屋そのものの様子や庭の様子は変わりませんが、外にある中秋の名月だけが真っ赤な色に変わっていることに気が付きます。そして部屋に飾られていた月見団子、すすき、里芋などのお供え物にお酒の注がれた大きな盃は天井の床にピタリとくっついており、盃に注がれたお酒は落ちてくることなく注がれた状態になっている。その状況から探索者と少女に掛かる重力だけが反転していることが分かり、あり得ない状況であることに気が付き正気度ロール(0/1D3)を行います。

【便宜上、建物の天井を下、建物の床を上と表現することを説明しておく。】

少女は探索者に「どうしてこんな恐ろしい場所に来てしまったのですか?夜が終わるまで見つからないように隠れなければ殺されてしまいます。」と耳元でコソコソと話しかけてきます。すると襖はスーっと開き、お婆さんが十徳包丁を持って入ってきます。少女は探索者の口を押え、お婆さんは上の床をヒタヒタと音を殺して歩いてきます。お婆さんが向かう先には少女が眠っていた布団がある。お婆さんは布団の中心へ包丁を向けると、そこへズドンと音を立てて包丁を突き刺し、引き抜いた後、もう一度包丁をズドンと音を立てて包丁を突き刺します。包丁を引き抜くとお婆さんは布団を剥ぎ、中に誰もいないことを確認すると、押し入れを開け、次に縁側からきょろきょろと辺りを見まわし、そこにいるはずの誰かを探して回る様子が分かります。夜中に持て成してくれたお婆さんと同じとは思えない豹変ぶりに正気度ロール(0/1D2)を行います。

【お婆さんに対して、部屋が暗いため<目星>の半分で判定を行う。成功した場合はこの行を追加で描写する】<目星>に成功した探索者はお婆さんの両側面の髪の中から小さな角が生えており、足袋に包まれた足は山羊のヒヅメのような形をしていることに気が付きます。一見人の姿に見えるお婆さんが亜人間であることを知り、正気度ロール(0/1D5)を行う。

お婆さんは元来た襖の奥へと戻っていきます。部屋から出たのを確認して少女は探索者の口から手を放します。

 

・探索者が身に着けているものは探索者と同じ重力の向きになる。

・探索者の体から離れたものは通常の重力の向きになる。(血液や毛髪も同じ)

・【お婆さんが少女を襲った理由を聞いた場合】少女は「私が自分の正体に気付いてしまったから、月に帰る使命を思い出してしまったからお父さんとお母さん【お爺さんとお婆さんのこと】は私を殺そうとしているのよ。私は月の民の貴族で、月を支配するのに邪魔になった族が私を地球に堕としたの。お父さんとお母さんは地球で私を監視する役目を負っているの。月が赤いのは族との争いで血に染まっているから。私は早く月へ帰って族を追い払って争いを終わらせなくてはならないのよ。」と真剣な面持ちで話します。

・【建物から逃げることを提案する】少女「一週間ほどうろついて見たけれど鏡寝荘の周りには足場になりそうなものは何もないため、逃げ出すことはできそうになかったわ。」

・【少女にこの世界(夢)からの脱出方法を聞いたところで、夢と現実の区別が付いていない】聞かれた少女は「信じられないのは仕方ないわ。でも、目の前で起きているこれが現実よ。私はこの調子で一週間逃げ続けているわ。そして私は何としても月に帰らないと。」と答える。

~夢の世界について~

ヒプノスによって現実感のある夢の世界であって、幻夢境(ドリームランド)とは異なる。探索者と少女の体は覚醒世界(現実)にあり、夢の世界に精神が捕らわれた状態にある。

・夢の中では感じないといわれる痛覚などもあり、現実と同じ感覚を持つ世界。

・探索者が夢の中で死亡した場合、死ぬ経験に正気度ロール(1/1D10)を行う。

・探索者が身に着けているものは探索者と同じ重力の向きになる。

・探索者の体から離れたものは通常の重力の向きになる。(血液や毛髪も同じ)

~少女の好感度~

少女が探索者にどれだけ魅かれるかがエンディングの大切なポイントとなる。ここではその方針の例を示す。

・魅かれる条件として、少女が直接的に守られたと分かる状況であること。(例えば、少女がいない場面で予め死体を隠しておいたとしたら少女は守られたことにすら気付かないだろう)

・【少女が受けるはずの正気度ロールを回避する】シークレットダイスで少女の正気度ロールを行い、少女が本来受けるはずの正気度喪失ポイントを好感度として加算する。

・【敵の攻撃を庇う】少女が本来受けるはずのダメージを好感度として加算する。

・【安心させる、勇気づける言葉を掛ける】言葉の数だけ好感度を加算する。

・【月に行くことを引き留める】少女に「月に行かないで欲しい」など、自分の傍に少女がいて欲しいことを伝えたなら好感度を倍(以降に取得する好感度も倍)にする。地球に残って欲しいと思ってくれる人がいることを知った少女は大きく心が揺す振られることだろう。(ただし、ニュアンスの違いになってしまうのだが、夢であることに気付き「月に行かない方が良い」と説明したのでは効果がない。少女はこの夢の世界が現実にしか思えない狂気状態に常に陥っているからだ。)

・最終的な少女の正気度と好感度を足した時、40ポイント以上になったのなら月へ帰る使命よりも、地球に残りたいと思うようになるだろう。【最後は『少女が現実に戻ろうとする』の方を描写する。】

 

10.         縁側

眼下には赤い月と小さな星が散りばめられた夜空が広がっている。そこに黒い影が横切る。その黒い影は段々と近づいてきており、見えているのは黒い船の船底であることが分かります。そしてその黒い船は鏡寝荘の玄関の方へと向かっていくのが見えます。

黒い船とは別に、日本庭園の池の方を見ると赤い月に加えて、茎が金色で実が白い枝を持つ苗木のように小さな木が映りこんでいるのが見えます。

 

・【少女に茎が金色で実が白い枝について伝えた場合】少女「凄く綺麗な木ですね。まるで『蓬莱の玉の枝』のようです。」

・【縁側の外など、建物の外に体の一部を出した場合】重力は建物よりも更に下に向かって重力が掛かっていることが分かる。もし建物の外に踏み外してしまったら、果てのない空を永遠へと落ち続けていってしまうのではないのかという異様で果てのない恐怖を覚え正気度ロール(1/1D3)を行う。

 

11.         日本庭園

草木や道に至るまで整っており、非常に綺麗に手入れされた庭で池が広がっている。

池を挟んだ先に茎が金色で実が白い枝を持つ苗木のように小さな木【蓬莱の玉の枝】がある。

 

・【蓬莱の玉の枝を持った場合】その木は容易く引き抜ける。その全貌は、根は銀でできており、茎が金で実は真珠でできている。

12.         廊下

廊下に出るとロビーの方が騒がしいことに気が付く。

【厨房前の廊下は天井の板が老朽化しており人の体重を何とか支えている。】厨房前の廊下を探索者と少女が通るとギシギシと音が鳴る。天井の隅には鼠が入れそうな小さな穴が開いていることに気が付きます。

【大きな衝撃を与えた場合】天井に大きな穴が開き、板が床にバラバラと落ちていきます。開いた大きな穴の先は恐らく天井裏になっている。音を聞きつけた何者かの「何の音だ?」という声が聞こえてきます。

 

13.         ロビー

ロビーには仏様の絵が描かれた水墨画の掛け軸が飾られてあり、掛け軸の前に石鉢が置かれています。

ロビーまで来るとお爺さんとお婆さんが正座をして頭を下している。すると玄関のドアが開き、灰色で油のように照っている皮膚で目のない蛙のような怪物が入ってくる。その怪物の鼻先からはピンク色の短い触手が小さく震えている。この怪物を目撃し正気度ロール(0/1D8)を行う。

その怪物は【(探索者+少女)×2】体おり、列を作ってそのままべたべたと廊下を進んでいく。【追いかける場合は宴会場に入っていくことが分かる】

怪物が入った後、お爺さんとお婆さんは顔を上げます。すると今度は若い男女の団体客がわらわらと入ってきます。彼らはそれぞれ廊下を抜けて思い思いの部屋へと向かっていきます。

団体客が途切れるとドアを閉めて廊下に戻ります。【お婆さんを追いかける場合は厨房の方へ入っていくことが分かる。】【お爺さんを追いかける場合は宴会場の方へ入っていくことが分かる。】

お爺さんと共に廊下を通って厨房の方へと向かっていきます。

 

・【玄関を開ける】黒い船がある。

 

14.         厨房

厨房は昔ながらのかまどが使われており、そこに羽釜や土鍋が炊かれている。

お婆さんが砥石で包丁を研いでいる。「今日は十五夜だから沢山月見団子を作らなくっちゃね。赤い月が一層映えるような肉団子をね。」そう言って包丁を研ぎ終えると木製のまな板の上を台所に置くと冷蔵庫の中から人の目玉や指先、毛髪などがぐちゃぐちゃに混ざった肉塊を取り出しまな板の上に置く。そしてお婆さんは大きくダンダンと音を立てながら研ぎ終わった包丁で肉塊を叩き始めます。人の肉塊を団子にするために叩いて挽肉に変える様子を目撃し、正気度ロール(0/1D3)を行います。

天井に近い梁を鼠が走っていくのが見え、そのまま廊下へと出ていきます。

 

15.         屋根裏

屋根裏に来ると動物の皮でできた外套が置いてあり、その上に何匹もの鼠が集まっているのが見つかります。大半の鼠は驚き奥の闇の中へと逃げていきますが、その中で【(少女+探索者)×2】匹の鼠が襲い掛かってきます。その鼠の頭部には毛がなく、人の顔をしており、目も白目に黒目があります。人と同じ顔を持つ奇怪な鼠【悪夢の中の鼠】を目撃し、正気度ロール(0/1D6)を行います。

【悪夢の中の鼠と1ラウンドのみの戦闘。2ラウンド以降は逃げ出す。】

鼠の居た場所には動物の皮でできた外套【火鼠の裘】が見つかります。しかし鼠の糞尿塗れで恐らくノミも住み着いているように見えます【素手で触れる場合は感染するかどうかCON×5で判定する】。

16.         医務室

ドアを開けると鉄の臭いが部屋に満ちていることに気が付く。

部屋には窓があり、月明りで部屋が照らされている。棚には様々な医薬品が取り揃えられている。

ベッド一台分、カーテンで閉め切られて囲われているスペースがある。

【<医学>があれば感染の症状を一時的に抑えたり、怪我を治したりすることができる。】

 

・【カーテンを開ける】カーテンを開けると白いシーツが敷かれたベッドが赤い血で汚れており、ベッドの中央には強力な力で貫かれたような直径10センチはある円形の穴が開いている。ベッドに穴をあけるほど強烈な力を持つ何かがいることを知った探索者は正気度ロール(0/1D3)を行う。

・【医務室の窓の外を調べる】医務室の窓から外を調べると縁に燕の巣が見つかります。既に雛は巣立った後で、変わりのように子安貝【燕の産んだ子安貝】が入っています。

 

17.         食事処

何人もの若い男女が食事を取っているのが見えます。

【ここではアイテムの場所のヒントが雑談として聞こえてくる。】

・【燕の産んだ子安貝】「燕の巣って食えるんだっけ?医務室の窓の外にあったやつ食おうぜ。」「馬鹿言え、泥やら枝やら混ざっていて見るからに食えないだろ。」

・【仏の御石の鉢】「玄関に立派な掛け軸の前に石造りの鉢が飾られていたけどあんなの置いてあったっけか?」

・【火鼠の裘】「ねずみが厨房をうろついているのを見たけど、どこに住み着いているのかね」

・【龍の首の珠】「大浴場のお湯が出てくる石像見た?立派な龍だからあとで見てみ?」

・【蓬莱の玉の枝】「庭園に金色に光るものが見えた気がするんだよ。」

 

18.         図書室

古めかしい本が何冊も入った本棚が並んでいる。

 

・【竹取物語に関連するものを探した場合】竹取物語の本が見つかる。概要は次の通り。

輝夜姫は5名の公達(きんだち)に求婚され、それぞれに珍しい宝を持ってくるように言った。

【仏の御石の鉢】釈迦が終身重用した鉢。徳の詰まった鉢で、『善行は巡り巡って我が身へ返ってくる』を体現させる。

【蓬莱の玉の枝】根が銀、茎が金、実が真珠の枝。持つものを裕福にする。

【火鼠の裘(かわごろも)】燃え尽きることのない鼠の皮。炎を纏うことができ、燃やすことで汚れを綺麗に焼け落とすことができる。

【龍の首の珠】龍の口の中(首に当たる位置)にある、真紅の珊瑚珠が入った水晶でできた宝玉。怪我や病気を治癒する力がある。

【燕の産んだ子安貝】ツバメの巣の中にある子安貝。安産、子孫繁栄に対する強い想いが込められている。

 

19.         脱衣所

男女に入り口が分かれている。

『関係者以外禁止』と書かれた鉄製の小さな扉がある。【少女に大浴場の湯口に手を入れることを伝えれば教えてくれる。】

 

・【関係者以外禁止の扉を開ける】中には大浴場の湯口の止水栓がある。

 

20.         大浴場

【大浴場の青龍の湯と朱雀の湯は日によって男湯、女湯が入れ替わるタイプである。青龍の湯が現在男湯として使われているのか女湯として使われているかはプレイヤーと相談すると良いだろう。】

大浴場は男女を大きな壁で仕切ってあり、天井で繋がっている。まばらに若者がお湯に浸かっているのが見えます。青龍の湯と書かれた大浴場には龍を象った立派な石像で口からお湯が出てきている。一方朱雀の湯と書かれた大浴場には大きな鳥を象った立派な石像で口からお湯が出てきている。湯口のすぐ近くには『湯口は高温となっています。火傷にご注意ください。』と注意書きが書かれている。

大浴場の天井は水滴が溜まっており、非常に歩きづらく滑りやすくなっている。

 

・【悪夢の中の若い客達の裸体を目撃した場合】両側面の髪の中から小さな角が生えており、足袋に包まれた足は山羊のヒヅメのような形をしていることに気が付きます。一見人の姿に見える人は亜人間であることを知り、正気度ロール(0/1D5)を行う。

・【湯口に手を突っ込む】龍を象った立派な石像の口の中に手を入れ、腕まで入れると奥に野球ボールほどの大きさの珠があることが分かる。引っ張り出してみると赤い珠玉の入った水晶玉が見つかる。

 

21.         宴会場

畳が綺麗に敷かれた縦長の部屋で、料理の置かれた座卓も縦に並んでいます。そこに鼻先に触手の生えた目のない蛙の怪物が座って食事を取っています。その座卓の前でお爺さんは弦楽器を弾いて怪物を持て成しています。

怪物が食べているものは赤い肉団子、目玉の浮かんだ汁を、音を立てながら汚らしく咀嚼します。その化け物の主食がなんであるか想像に難しくない様子を目撃し、正気度ロール(0/1D3)を行います。

【厨房のお婆さんを目撃していた場合】お婆さんが部屋に入ってきて「新しい月見団子をお持ちしましたよ。」と怪物に振舞い、持て成します。

 

22.         黒い船

玄関を開けたすぐ先には巨大な帆をいくつも持つ黒いガレオン船が1メートルほど浮いた状態で留まっている。

鼻先に触手の生えた目のない蛙の怪物が明確には分かりませんがまだまだ乗っていることが分かる。

少女「あの黒い船を奪うことができれば月に帰ることができそうです。できれば船は傷つけずに手に入れたいのですが…。大きな騒ぎを鏡寝荘で起こすことができれば全員を船から降ろすことができるかもしれません。」

 

・【食事処や怪物の数を調べることができた場合】『悪夢の中の怪物』が【(探索者+少女)×2】体まだ船に乗っていることが分かる。

23.         騒ぎを起こす

騒ぎを起こした場合は『悪夢の中のお爺さんとお婆さん』が駆けつけ、二人と戦闘になる。次のラウンドになると宴会場にいる【(探索者+少女)×2】体の『悪夢の中の怪物』が戦闘に参加する。

宴会場で騒ぎを起こした場合は【(探索者+少女)×2】体の『悪夢の中の怪物』と戦闘になる。もし、お爺さんとお婆さんが居れば戦闘に参加する。居合わせていない場合は後のラウンドから戦闘に参加する。

『悪夢の中の怪物』を倒すと、次のラウンドで黒い船にいる【(探索者+少女)×2】体の『悪夢の中の怪物』が1体ずつ戦闘に参加する。

『悪夢の中のお爺さんとお婆さん』のどちらも倒した場合は次のラウンド『悪夢の中の若い客達』が1体戦闘に参加する。(お爺さんとお婆さんを倒したら亜人は最大1人になる)

『悪夢の中の怪物』を全て倒したところで戦闘が終了する。亜人間はたじろぎ逃げていく。

 

24.         夢の終わり

黒いガレオン船に乗ると少女は操舵席で舵を握ると日本庭園の池の上まで行き、船体は180度ひっくり返ります。すると探索者の方を向いて正座します。少女は「私一人ではとても辿り着くことはできませんでした。お客様である【探索者】のお手を煩わせてしまったことを陳謝致します。」と言い深くお辞儀します。

 

少女の正気度が尽きている

少女「これでやっと両親の待つあの赤い月へ帰り、争いを止めることができます。ありがとうございました。月へ帰った後もこの恩は忘れません。」

探索者の体は薄くなっていき、意識も薄れていきます。

 

少女の正気度が残っている

少女「これでやっと両親の待つあの赤い月へ帰り、争いを止めることができます。ありがとうございました。月へ帰った後もこの恩は忘れません。」

探索者の体は薄くなっていきます。薄れ行く意識の中で池に映りこむ赤い月から段々赤みが薄れていき、黄色い月へと替わっていくのが分かります。

 

少女が地球に残ろうとする

少女は「これでやっと両親の待つあの赤い月へ帰り、争いを止めることができます。ありがとうございます。」そういうと、少女は暫く静止し「…喜ばしいことのはずなのに…なぜか行きたくないと思ってしまって、体が立ち上がれません。私は…ここに残りたいと(私自身の幸せを)望んでしまっています。」

夜空の月から段々赤みが薄れていき、黄色い月へと替わっていくのが分かります。

【月へ送り出すのであれば『少女の正気度が残っている』と同じルートになる。】

【引き留めるのであれば】探索者と少女の体は薄くなっていき、意識も薄れていきます。

 

探索者の正気度が0、または耐久値が0。

探索者の体は薄くなっていき、意識も薄れていきます。

 

25.         目覚め

意識がはっきりとしてきて目が覚めると寝た時と同じ場所で目が覚めます。部屋は暗く部屋の様子は変わっていないことから、まだ十五夜の真っただ中であることが分かります。

 

少女の正気度が尽きている。探索者の正気度が0、または耐久値が0。

少女の方から物音が聞こえます。見てみると月見のお供えに置いたお酒のお盆から無数に目のある触手が一本伸び、少女の方を見る。そして続けてお酒のお盆から無数の口が付いた触手が、何本も少女の体に伸びて、ぐるりと掴む。するとその口がガチガチと音を立てて肉を噛みちぎっていきます。無数の口によって噛み千切られて少女の体から小さな肉片と血がボトボトと床に散らばっていきます。そして肉片を咥えてお酒のお盆へと引きずっていきます。骨すらも噛み千切っていくその口を持つ触手の化け物が現実に存在し、その化け物の犠牲となった少女だったはずの肉片を目撃した探索者は正気度ロール(1D10/1D100)を行う。【もしお酒のお盆がひっくり返された場合は日本庭園の池から触手が襲い掛かる。】

【探索者の正気度が尽きている場合はこの行を追加】お酒のお盆から伸びた無数の目の生えた触手の視線は探索者の方を向き、悪寒を感じます。間髪入れず無数の口が付いた触手が複数本探索者へ伸び、抵抗虚しく足を掴まれ、胴を掴まれ、頭を掴まれ捕縛されます。一斉に痛みが全身を襲い掛かります。探索者の意識が無くなったことは救いだ。

【探索者の正気度が残っている場合】お酒のお盆に映るはずの黄色い月は赤い色をしていた。

 

少女の正気度が残っている

月見に飾られたピラミッド状の団子の一番上が無くなっている。少女の呼吸はなく、脈拍も止まっている。

お爺さんとお婆さんは少女が亡くなっていることに気付きます。そしてお婆さんは月見に飾られたピラミッド状の団子の一番上が無くなっていることに気付いたようで「一番上の団子は霊界に続くという逸話もあります。輝夜が霊界への旅立ちに持ち出したのかもしれません。このような場面にお客様を立ち会わせてしまったこと、深くお詫び申し上げます。」と言って、深々と頭を下げます。

 

少女が地球に残ろうとする

少女の方から物音が聞こえます。見てみると少女が布団から上半身を起こしているのが見えます。

探索者を見つけると「私は長い長い夢を見ていたようです。不思議に思うかもしれないのですが、夢の中でお客様がこの世を旅立とうとする私を引き留めてくれたのです。」

【以下ロールプレイを挟んで満足いくところで終着させる。】

26.         結末

夢の世界から戻ってきた探索者は一歩一歩大地を踏みしめ、大地に立つ安心感を覚え1D3の正気度を獲得する。

人ではない怪物と亜人を相手に戦った体験は探索者に強い気概を持たせることだろう。2D6の正気度を獲得する。

少女が夢の中の月へ旅立ち、お爺さんとお婆さんと共に現世での最後を看取ることができたのなら1D10の正気度を獲得する。

少女が現実で目を覚まし、生きる活力を得たのなら探索者は自身の成長を大きく自覚することができるだろう。2D10の正気度を獲得する。

 

27.         シナリオ名

引力をテーマにしました。
引力には二つの意味があり、一つ目は物理的な重力(gravitation)のことで潮の満ち引きを起こすなど、地球は月の重力の影響を受けています。二つ目は感情的な魅力(attraction)のことで人を惹きつけるものは多くの人に影響を与えます。

十五夜ということで月が大きな魅力となり、月の重力に引っ張られる。…という状況を楽しんで頂ければと思って考えました。

そして、あわよくば探索者自身が運命すら引き寄せる引力を持ってくれればと期待を込めて少女が生存するエンディングを用意しました。

 

28.         参考

Wikipedia『竹取物語』

Yahoo!知恵袋『お礼100枚!!! 「竹取物語」で、かぐや姫が求婚してきた相手に求めた珍し…』

 

 

 

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